113A61

70歳の女性。胸の重苦しさと息苦しさを主訴に来院した。1週間前から、朝の犬の散歩中に胸の重苦しさと息苦しさを自覚するようになったが、2~3分の休息で症状が消失していた。本日、午前9時から同症状が出現し持続するため、午前10時に家族とともに受診した。65歳時に高血圧症と脂質異常症を指摘されたが、定期的な通院は行っていない。家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。身長156cm、体重60kg。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧116/78mmHg。呼吸数16/分。SpO2 99%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。胸部エックス線写真に異常を認めない。12誘導心電図でV2、V3、V4でST低下を認める。心エコー検査で左室前壁の壁運動低下を認めるが、心嚢液の貯留を認めない。

最も可能性が高いのはどれか。

急性心膜炎
急性冠症候群
たこつぼ心筋症
ウイルス性心筋炎
急性肺血栓塞栓症

解答: b

113A61の解説

胸の重苦しさと息苦しさを主訴に来院した70歳の女性。5年間無加療の高血圧症と脂質異常症がある。12誘導心電図でV2、V3、V4でST低下を認め、心エコー検査で左室前壁の壁運動低下を認めることから虚血性心疾患を考える。おそらく左前下行枝の狭窄であろう。
a 急性心膜炎であれば広範なST上昇を認める。
b 正しい。労作時のみであった症状が本日は1時間持続している。直ちに冠動脈造影検査を行う必要がある。
c たこつぼ心筋症であれば心基部が過収縮、中間部から心尖部にかけて無収縮がみられる。
d ウイルス性心筋炎であれば全体的に心機能が低下する。
e 急性肺血栓塞栓症では左室機能は保たれる。また、心電図では右心負荷所見が見られる。

正答率:92%

テーマ:急性冠症候群〈ACS〉の診断

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