112F78

次の文を読み、78〜80の問いに答えよ。

59歳の男性。激しい前胸部痛と息苦しさのために救急車で搬入された。

現病歴:3日前から5分程度のジョギングで前胸部の絞扼感と息苦しさとを自覚していたが、10分程度の休息で症状は消失していた。本日午前6時30分に胸痛と息苦しさが出現し、1時間以上持続するため救急車を要請した。

既往歴:5年前から高血圧症で降圧薬を服用している。

現 症:意識はやや混濁しているが呼びかけには応じる。身長176cm、体重82kg。体温36.6℃。心拍数114/分、不整。血圧90/46mmHg。呼吸数28/分。SpO2 89%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。冷汗を認め、四肢末梢に冷感を認める。心雑音を認めないが、III音を聴取する。呼吸音は両側の胸部にcracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。

検査所見:血液所見:赤血球520万、Hb 16.3g/dL、Ht 51%、白血球15,800、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、AST 14U/L、ALT18U/L、CK 420U/L(基準30〜140)、クレアチニン1.8mg/dL。心エコー検査で左室拡張末期径は51mm、壁運動は基部から全周性に低下しており、左室駆出率は14%であった。心電図を別に示す。

救急外来で気管挿管を行った後、冠動脈造影を行う方針とした。カテーテル室に移動して、まず大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉を留置した。

この患者のIABP管理として誤っているのはどれか。

留置後は抗血栓療法を行う。
冠動脈血流の増加が期待できる。
心収縮期にバルーンを膨張させる。
留置後は下肢虚血の発症に注意する。
バルーン先端部が弓部大動脈にかからないようにする。

解答: c

112F78の解説

強い前胸部痛を主訴に搬送された59歳男性。心電図ではI, aVL, V1-6でST上昇を認め、aVLとV1〜V3では異常Q波が指摘可能。ショックバイタルであることや左室駆出率が著明に低下していることから広範囲の急性心筋梗塞〈AMI〉であると予想する。このような症例に対しては、血行動態の安定化を図るためにIABPを留置する。
a IABPを血管内に留置することで、血栓を生じる。予防のためヘパリン投与を行う。
b 拡張期にバルーンが膨らむことにより冠動脈血流が増加する。
c 誤り。拡張期にバルーンが膨らみ収縮期に縮むことにより、後負荷が減少し心負荷が軽減する。
d 一般的に大腿動脈から留置する。太いカテーテルであるため、下肢血流が低下し虚血を起こす可能性があるため注意を要する。
e 大動脈弓部と腎動脈にかからないように、それらの間に留置する。

正答率:97%

テーマ:【長文1/3】IABP管理について

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