112F69

次の文を読み、69〜71の問いに答えよ。

中年の女性。意識障害のため救急車で搬入された。

現病歴:ホテルの部屋で倒れているのを従業員が発見し、呼びかけに反応が乏しいため救急車を要請した。救急隊到着時にはけいれんしていたが、搬送開始直後に治まった。

既往歴:不明

生活歴:不明

家族歴:不明

現 症:意識レベルはJCS II-20。身長160cm、体重50kg。体温38.6℃。心拍数106/分、整。血圧94/50mmHg。呼吸数24/分。SpO2 100%(マスク5L/分酸素投与下)。皮虜はやや乾燥。瞳孔径は両側6.5mmで、対光反射は両側やや緩慢。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥している。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音は減弱している。四肢に麻痺はなく、腱反射は正常。

検査所見:尿所見:蛋白(―)、糖(―)、ケトン体(―)、潜血(―)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球450万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球11,200、血小板16万、PT-INR 1.2(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.0 g/dL、アルブミン3.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 46U/L、ALT 32U/L、CK 1,500U/L(基準30〜140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、血糖98mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 102mEq/L。動脈血ガス分析(マスク5L/分酸素投与下):pH 7.35、PaCO2 28Torr、PaO2 100Torr、HCO3- 15mEq/L。心電図は洞調律で不整はないが、QRS幅が広がりQT間隔の延長を認める。ST-T変化を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比と肺野とに異常を認めない。頭部CTに異常を認めない。

ホテルの部屋のごみ箱に錠剤の空包が多数捨ててあったとの情報が得られた。

最も可能性が高い薬物はどれか。

麻薬
コリン作動薬
三環系抗うつ薬
交感神経作動薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬

解答: c

112F69の解説

中年女性の薬物大量内服による自殺企図を思わせる症例。まず1問目となる本問では原因薬物の推定を行う。ヒントは低血圧、瞳孔径が両側6.5mmと散瞳していることと、心電図でQT延長がみられることである。
a 漠然とした用語であるが、ここではモルヒネやヘロイン、コカインの総称を指すと思われる。そもそもこれらの薬剤が「錠剤の空包」で提供されることは考えにくい。また、概して縮瞳をみることが多い。
b コリン作動薬を服用すると縮瞳する。
c 正しい。三環系抗うつ薬の利用によりQT延長や意識障害をみる。実は111I69で本問の伏線とみられる出題があった。
d 交感神経作動薬であれば確かに散瞳はするが、低血圧にはならない。
e ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも散瞳や意識低下がみられるが、心電図変化はみられない。

正答率:55%

テーマ:【長文1/3】大量服用による自殺企図の原因と考えられる薬物

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