112E46

次の文を読み、46、47の問いに答えよ。

67歳の男性。昨日の昼から尿がほとんど出ていないため来院した。

現病歴:3か月前から昼夜ともに頻尿があり、2か月前から1回尿量の減少と排尿後の残尿惑があった。昨日の昼から尿が出ず、下腹部が張ってきたため受診した。体調不良のため、一昨日の夕食後から市販薬を服用している。他の医療機関は受診していない。

既往歴:特記すべきことはない。

家族歴:父親が糖尿病。

生活歴:喫煙は20本/日を40年間。飲酒は機会飲酒。

現 症:意識は清明。体温35.7℃。脈拍104/分、整。血圧158/82mmHg。頭頸部と胸部とに異常を認めない。腹部は下腹部が膨隆しておりやや硬く、軽度の圧痛を認める。直腸指診で鶏卵大で弾性軟の前立腺を触知し、圧痛を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白1+、糖2+、潜血1+、沈渣に赤血球1〜5/1視野、白血球5〜10/1視野。血液所見:赤血球478万、Hb 14.1g/dL、Ht 46%、白血球7,800、血小板35万。血液生化学所見:尿素窒素21mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 103mEq/L。CRP 0.5mg/dL。

市販の薬剤による症状の可能性を考えた場合に適切な質問はどれか。

「胃薬を飲みましたか」
「風邪薬を飲みましたか」
「睡眠薬を飲みましたか」
「痛み止めを飲みましたか」
「ビタミン薬を飲みましたか」

解答: b

112E46の解説

高齢男性の「尿が出ない」。このパターンでは膀胱まで尿が到来しているのか(尿閉なのか?)、あるいは到来していないのか(乏尿または無尿なのか?)の鑑別が重要となる。「下腹部が膨隆しておりやや硬く、軽度の圧痛」という記載からは膀胱が腫大している様子が見て取れ、尿閉と考えられる。前立腺が鶏卵大と腫大していることと合わせ、前立腺肥大症〈BPH〉による尿閉が最も考えやすい。
a 抗コリン成分が含まれる市販の胃薬は一部存在する。しかし、一般人が「体調不良のため」に購入して服用するものとは考えにくい。
b 正しい。風邪薬に含まれる抗コリン成分が前立腺そのものや排尿生理に作用し、尿閉を悪化させる。
c 抗コリン成分が含まれる睡眠薬は一部存在する。しかし、睡眠改善薬と異なり、睡眠薬は医療用に処方されるものであり、市販されてはいない。また、一般人が「体調不良のため」に服用するものとは考えにくい。
d オピオイド鎮痛薬には排尿障害の副作用を持つものもある。が、これは当然ながら市販されてはおらず、正当な理由のもと医療用に処方される。また、一般人が「体調不良のため」に気軽に使う薬剤でもない。
e 一般にビタミン薬に尿閉の副作用はない。

正答率:92%

テーマ:【長文1/2】市販薬による尿閉を考えた場合に適切な質問

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