112C63

次の文を読み、63〜65の問いに答えよ。

35歳の女性。左上下肢の脱力のため夫に連れられて来院した。

現病歴:3年前に複視を自覚したが、疲れ目と考え様子をみたところ、数日で自然軽快した。1年前に右眼のかすみを自覚して自宅近くの眼科診療所を受診したが、眼底検査に異常なく約2週間で軽快した。2日前に左下肢、引き続いて左上肢の脱力を自覚した。本日、歩行も困難になったため受診した。

既往歴:特記すべきことはない。

生活歴:事務職。会社員の夫と2人暮らしで子どもはいない。喫煙歴と飲酒歴はない。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長156cm、体重50kg。体温36.5℃。脈拍64/分、整。血圧126/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。視カは右0.4(0.8×−1.5D)、左0.6(1.2×−1.0D)。他の脳神経に異常を認めない。四肢筋力は、右側は正常、左側は徒手筋力テストで3〜4の筋力低下を認める。腱反射は左上下肢で亢進し、左Babinski徴候が陽性である。自覚的に左半身のしびれ感を訴えるが、温痛覚、振動覚および関節位置覚は左右差を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球5,300、血小板21万、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)、APTT 31.4秒(基準対照32.2)。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.9g/dL、IgG 1,424mg/dL(基準960〜1,960)、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 177U/L(基準176〜353)、ALP 233U/L(基準115〜359)、γ-GTP 32U/L(基準8 〜50)、CK 72U/L(基準30〜140)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖98mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。免疫血清学所見:CRP0.3mg/dL。抗核抗体、抗DNA抗体、抗カルジオリピン抗体、抗アクアポリン4抗体およびMPO-ANCAは陰性。脳脊髄液所見:初圧80mmH2O(基準70〜170)、細胞数1/mm3(基準0〜2)、蛋白60mg/dL(基準15〜45)、糖60mg/dL(基準50〜75)。頭部MRIのFLAIR像を別に示す。

診断に有用な検査はどれか。

脳波
視覚誘発電位
脳血流SPECT
頸動脈超音波検査
反復誘発筋電図検査

解答: b

112C63の解説

30代女性の左上下肢脱力。現病歴からは時間的・空間的多発が読み取れる。また、画像では高信号域が多発しており、多発性硬化症〈MS〉の脱髄病変に矛盾しない。
a てんかんの鑑別等に有用。
b 正しい。視神経炎がみられているため、視覚誘発電位が検査として有用。
c Alzheimer型認知症など、脳血流の分布異常がみられる病態に有用。
d 動脈硬化等を背景とした一過性脳虚血発作〈TIA〉や脳梗塞に有用。
e 重症筋無力症〈MG〉やLambert-Eaton症候群など神経筋接合部〈NMJ〉の疾患に有用。

正答率:70%

テーマ:【長文1/3】多発性硬化症〈MS〉の診断に有用な検査

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