111H35

次の文を読み、35、36の問いに答えよ。

81歳の男性。前立腺炎で入院中に下痢を訴えている。

現病歴:10日前から、急性細菌性前立腺炎の診断でニューキノロン系抗菌薬の投与を受けている。治療開始後に症状は軽快したが、2日前から頻回の水様下痢と発熱が出現した。

既往歴:77歳時に肺癌のため肺切除術。81歳で再発し脊椎骨転移。

生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。普段は介助を要するが歩行可能であった。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長150cm、体重42kg。体温37.8℃。脈拍104/分、整。血圧114/64mmHg。呼吸数20/分。SpO2 92%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音を聴取する。直腸指診で前立腺の腫大と圧痛とを認めず、褐色泥状便を認める。神経学的所見に異常を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ケトン体1+、潜血(−)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球360万、Hb 10.0g/dL、Ht 34%、白血球21,000、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.3g/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 17U/L、ALT 7U/L、LD 180U/L(基準176〜353)、ALP 243U/L(基準115〜359)、γ-GTP 48U/L(基準8〜50)、アミラーゼ146U/L(基準37〜160)、CK 30U/L(基準30〜140)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、血糖99mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 108mEq/L。CRP 4.8mg/dL。

適切な対応はどれか。

便潜血検査
腹部CT検査
止痢薬の投与
抗菌薬の中止
広域スペクトル抗菌薬への変更

解答: d

111H35の解説

発熱と水様下痢を認める81歳男性。既往歴に肺癌再発と骨転移の記載があり、免疫力が低下していることが予想される。これにより急性前立腺炎を呈したのであろう。抗菌薬使用後の水様下痢であり、偽膜性腸炎を疑う。
a 便培養や便中CDトキシン検出は有効だが、便潜血検査は無効。
b 腸管内に偽膜が形成された病態であるため、腹部CTではみることが困難。
c 止痢薬は菌の排出を遅らせてしまう。感染性の下痢には一般に好ましくない。
d 正しい。原因と考えられるのは抗菌薬であるため、これをまず中止する。
e 治療にはメトロニダゾールやバンコマイシンを使用する。原因がほぼ特定されている今、あえてスペクトルを広げる必要はない。

正答率:88%

テーマ:【長文1/2】偽膜性腸炎疑いの患者への対応

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