111H30

82歳の男性。腎盂腎炎の治療のため入院中である。セフェム系抗菌薬を1日3回(毎食後)内服していたが、尿所見の改善がみられたため、昨夜、担当医は看護師に対して、「明朝からの抗菌薬を中止してください」と口頭で指示を行った。担当医は口頭で指示を行ったことを翌朝、出勤してからカルテの経過記録に記載した。ところが朝の配薬を担当する看護師は抗菌薬を患者に渡してしまい、リーダー看護師が口頭指示に気付いたときには、すでに患者は抗菌薬を服用していた。リーダー看護師から連絡を受けて担当医が患者を確認した時点では明らかな副作用は認められなかった。担当医は指示が履行されなかったことを患者に説明し、引き続き副作用の観察について看護師に指示書を渡した。

次に行う対応として適切なのはどれか。

病室で看護師を注意する。
口頭指示に関する記録を削除する。
患者の血液を採取し検体を保存する。
院外の事故調査委員会に調査を依頼する。
医療安全管理部門にインシデントを報告する。

解答: e

111H30の解説

抗菌薬停止の指示をしていたにも関わらず、伝達が悪く抗菌薬投与が実行されてしまった。実臨床でもよくあるシナリオだ。「どうしてオレの言ったことが実行されていないんだ!」と立腹し、看護師を責めてしまう医師も多い。が、看護師も人間だ。ミスすることはある。また、口頭で指示をした自分にも非はある。組織として再発防止に努めることが重要と言えよう。
a 個人を責めるべきではない。さらに言えば、病室には患者さんがいるため、内部事情について口にするのは好ましくない。
b 行った医療行為の記載は消してはならない。禁忌。
c 副作用が疑われ検査が必要と判断する場合に実施する。
d インシデントであり、院外に調査を依頼する事例ではない。
e 正しい。服用実施しているも、副作用がみられていない。インシデントである。
※一定期間、一つの医療機関で勤務を続けていると、医療者により指示の出し方を変える必要があることに気づく。A看護師はベテランであり出した指示を確実に実行してくれるが、B看護師は新人のためミスも多く指示が通らないこともある、といった具合だ。この状況下で例えばB看護師の担当患者に何かしらの服薬変更が必要になった際にはどうすればよいか。口頭で済ませるのではなく、しっかりとカルテ上で指示を書いた上、ナースステーションに出向き他の看護師にも指示を再度出しておく。あるいは勤務交代表をみて、翌朝の配薬を担当することになるであろう看護師に直接指示を出す。もっと慎重な薬剤を投与するケースでは自身が朝に病棟へ実際に出向いて確認する。こうした何重にもおよぶ手厚い対応をできる医師こそが優れた医師といえる。医師は多忙な職種であるが、真にデキる医師はこうしたところに時間を惜しまない。

正答率:90%

テーマ:インシデントへの対応

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