111E56

32歳の女性。2回経妊2回経産婦。1年前からの不正性器出血を主訴に来院した。臨床病期1期の子宮頸癌と診断され、3週間後に広汎子宮全摘術とリンパ節郭清術が予定されている。予測出血量は800mLである。血液所見:赤血球380万、Hb 11.4g/dL、Ht 37%、白血球5,200、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、AST 32U/L、ALT 29U/L。血液型はAB型RhD(−)である。

現時点の対応として誤っているのはどれか。

鉄剤投与
自己血貯血
不規則抗体スクリーニング
赤血球液-LRとの交差適合試験
血液準備量について院内輸血部門と調整

解答: d

111E56の解説

3週後に予定出血量が800mLの手術を予定しているRhD(−)の若年女性。日本人はRhD(+)の者が多いため、輸血製剤の確保が通常より難しい。この背景下で手術に向けた現時点の対応を考える。
a Hbが11.4g/dLと貧血とまでは言えないが、決して十分量とも言えない値である。bにある自己血貯留をすることや、術中の出血を考えるとHbの材料となる鉄は投与しておきたい。
b 大量出血が予定される待機手術において自己血貯留は有効である。本ケースはRhD(−)ということもあり、さらに有効性が高い。
c 抗D抗体などの不規則抗体は事前にスクリーニングが必要。
d 誤り。交差適合試験は実際の輸血製剤と行うもの。ゆえに、現時点ではなく手術直前(具体的には術前72時間以内)に実施する。
e 事前準備として院内輸液部門と調整が必要となるが、これは常識的観点で正しいと判断できよう。
※交差適合試験の意義がつかめなかった受験生が多かったようで、過半数の者がaを選択してしまった。「誤っているのはどれか」という設問であるため、鉄剤投与(患者に大きな害が及ぶわけではない)を選ぶのはセンスがよくないと思う。

正答率:20%

テーマ:Rh(-)患者の術前に行うべき対応

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