111D44

34歳の女性。前胸部不快感、呼吸困難および悪心のため救急車で搬入された。10日前から感冒様症状に続き、37℃台の発熱、悪心およびふらつきが出現していた。3日前から前胸部の不快感と呼吸困難とが出現し、増悪してきたため救急車を要請した。体温36.9℃。心拍数112/分、整。血圧74/40mmHg。呼吸数24/分。SpO2 98%(鼻カニューラ1L/分酸素投与下)。IIl音とIV音とを聴取する。両下胸部にcoarse cracklesを聴取する。四肢末梢の冷感を認める。血液所見:赤血球418万、Hb 12.7g/dL、白血球11,300、血小板20万。血液生化学所見:AST 186U/L、ALT 64U/L、LD 995U/L(基準176〜353)、CK 352U/L(基準30〜140)、CK-MB42U/L(基準20以下)。CRP 11mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査は陽性。胸部エックス線写真で心拡大と肺うっ血とを認める。来院時の心電図(A)と心エコー図(B)及び入院14日目の心エコー図(C)を別に示す。

最も可能性の高い疾患はどれか。

急性心筋炎
急性右室梗塞
僧帽弁狭窄症
急性肺血栓塞栓症
特発性拡張型心筋症

解答: a

111D44の解説

前胸部不快感と呼吸困難及び悪心のため救急搬送された34歳の女性。来院時、血圧低下と頻脈とを認めショック状態である。III音・IV音の聴取、coarse crackles、四肢末梢の冷感、胸部エックス線での心拡大と肺うっ血、といった情報から急性心不全を呈している。心筋逸脱酵素(CK、CK-MBの上昇、トロポニンT陽性)と、先行する感冒症状を認めることから急性心筋炎を考えよう。来院時の心電図Aでは全ての誘導で低電位を、II・III・aVF・V2〜6と多くの誘導でST上昇を認めている。心エコー図では入院時(B)はMモードにて左室壁が浮腫状(正常は1cm程度であるが、2cm弱まで肥厚している)を呈しており、収縮期と拡張期でほぼ壁の厚みが変わらない(つまり収縮できていない)が、14日目(C)では壁の厚みが1cm程度まで改善し、収縮も改善していることも急性心筋炎に矛盾しない。悪心や肝機能上昇はうっ血肝によるものであり、しばしば心不全時に見られる。
a 正しい。上記の通り。
b 右室梗塞であれば左室壁運動低下や心電図にて広範なST変化は認めず所見と一致しない。
c 僧房弁狭窄症では心不全を呈してもよいが左室壁運動は急速に低下しないし、それが2週で改善することもない。
d 肺塞栓症であれば左室壁運動低下は認めない。
e 拡張型心筋症であれば壁は浮腫状ではなく菲薄化し左室の拡大(6cm以上)も認める。また、2週で改善しない。

正答率:80%

テーマ:急性心筋炎の診断

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