111B44

20年前、機械工場から化学物質が大気中に流出した。直後から地域で気管支喘息様の症状を訴える者がみられたが、一時的な流出で数か月後には症状を訴える者はいなくなった。当時の調査では、個人の曝露量と急性の気管支喘息様症状の有病率とに相関が認められた。最近になって、この物質に曝露すると5年後から肝臓悪性腫瘍による死亡率が増加することが海外で報告された。このため、所管する地方自治体が周辺住民への健康影響を再評価することとなった。当時の個人の曝露量のデータは自治体に保管されている。

健康影響の評価のために最初に着手するのはどれか。

当時の情報をすべて破棄する。
前向き研究のデザインに着手する。
この地域の肝臓悪性腫瘍による死亡率を調べる。
現在の工場周辺の大気中化学物質濃度を測定する。
肝臓悪性腫瘍の入院患者による症例対照研究を開始する。

解答: c

111B44の解説

機械工場から流出した化学物質によると思われる、気管支喘息様症状と、肝臓悪性腫瘍による死亡率増加の可能性。健康影響の評価のために何をすべきか、常識的観点から選択できればよい。
a 隠蔽に該当する。
b 前向き研究は後向き研究に比べて時間や費用がかかる。最初に着手すべきことではない。
c 正しい。まずはこの地域における肝臓悪性腫瘍死亡率を調べ、他地域と対比することから着手すべきである。
d 流出から20年が経過しており、現在の大気中に化学物質は浮遊していない可能性が高い。
e 症例対照研究によって化学物質への曝露と肝臓悪性腫瘍との相関が見いだせる可能性はあるも、本問で問題となっているのは「周辺住民への健康影響」である。入院患者に限定した研究では題意を満たさない。
108F17の改変問題。

正答率:90%

テーマ:公害による健康影響の評価で最初に着手すべきこと

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