110I63

16歳の女子。初経がないことを心配して来院した。身長の伸びは2年前に止まっている。身長164cm、体重52kg。乳腺はTanner 4度、恥毛はTanner 3度、腋毛はみられない。外陰は女性型だが膣口を認めない。鼠径部に腫瘤を触知しない。
最初に行う検査はどれか。
頭部CT
血中FSH
腹部超音波検査
末梢血染色体分析
血中エストラジオール

解答: c

110I63の解説

発育停止(のわりに164cmと比較的十分な身長がある)、原発性無月経といった記載からは性腺の異常を考える。外陰が女性型にもかかわらず膣口がないことからはRokitansky症候群やアンドロゲン不応症を考える。Rokitansky症候群はMüller管の形成異常が原因であり、性ホルモン異常はみられないため、アンドロゲン不応症が第一候補となろう。ただし「鼠径部に腫瘤を触知しない」という記載が奇異だ。アンドロゲン不応症では降下出来なかった精巣が腹腔内に停留することが多く、腫瘤を触知する可能性が高い。精巣が萎縮してしまい痕跡化しているのか、鼠径部まで降下せずそもそも腹腔内にあるのか、それともアンドロゲン不応症という前提が誤っているのか。やや悩ましいが、この悩ましい局面にこそ有用な検査を選ぶと考えれば1つしか答えはない。
a 下垂体腺腫など、頭蓋内病変による性腺機能低下を考えた際に有効。
b FSHの高低により中枢性と末梢性の病変を鑑別可能だが、アンドロゲン不応症を第一に考えている今、この鑑別は有用性が低い。
c 正しい。腹腔内に精巣があるか、子宮はあるか、といった情報を画像として簡便に得ることができる。最初に行うべき検査である。
d 誤答した受験生の大半が本選択肢を選んでいる。正常女性では46,XX、アンドロゲン不応症では46,XYとなるため、たしかに有益な情報が得られる。が、本検査には時間を要するため設問文にある「最初に行う」という条件をみたさないのだ。
e アンドロゲン不応症では相対的に女性ホルモンが優位となるため、血中エストラジオールは低値ではない可能性が高い。が、この値が正常値であっても高値であっても、とくに鑑別診断には有用とならない。もっと言えば、周期性に変動する血中エストラジオールをスポットで測定しても得られる情報は乏しい。
※「最初に行う」から素直にcを選べば正答には至るが、深くまで考えると実に深い良問。こうした問題を繰り返し演習してパターンを体得してほしい。

正答率:60%

テーマ:原発性無月経に最初に行う検査

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