110G56

71歳の女性。体重減少、易疲労感および腰背部痛を主訴に来院した。食欲が低下し、6か月で体重が7kg減少した。約1か月前から体調不良を自覚していたが家事はこなしていた。毎日30分散歩をしていたが、疲労感が強く休むことが多くなった。最近になって腰背部痛も出現してきたが、なんとか我慢できている。身長156cm、体重42kg。体温36.8℃。脈拍80/分、整。血圧136/80mmHg。呼吸数16/分。腹部は平坦、軟で、上腹部に軽度圧痛を認める。下腿に軽度の浮腫を認める。徒手筋力テストで下肢の筋力は4である。片足立ちは3秒以上保持できず、不安定である。四肢に筋肉痛、関節痛および異常感覚はない。腱反射と振動覚は正常である。血液所見:赤血球392万、Hb 10.8g/dL、Ht 32%、白血球7,200、血小板30万。血液生化学所見:総蛋白5.4g/dL、アルブミン2.6g/dL、CK 62U/L(基準30〜140)、血糖118mg/dL。CRP 3.6mg/dL。腹部造影CTで膵体部に5cmほどの腫瘍性病変とそれより尾部の膵管の拡張を認め、腹水が貯留していた。入院後の腹水穿刺で、腹水に淡黄色の混濁があり、細胞診でクラスVの腺癌であった。
この患者に当てはまるのはどれか。
悪液質
多発性筋炎
廃用症候群
慢性疲労症候群
多発ニューロパチー

解答: a

110G56の解説

膵癌の診断はすでについている。担癌状態で全身が衰弱していく状況をどう形容するか、という知識が問われている。
a 正しい。担癌状態等による栄養失調で衰弱した状態を悪液質〈cachexia〉と呼ぶ。
b CK上昇もなく、否定的。
c 毎日30分の散歩をしており、特に筋萎縮や程度の大きな筋力低下の所見は記載がない。廃用症候群は否定的。
d 原因不明の強い疲労が6か月以上持続する状況を指す。
e 末梢神経障害を思わせる記載はない。

正答率:90%

テーマ:膵癌による悪液質

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