109E50

68歳の女性。下肢の筋力低下を主訴に来院した。3か月前から下肢の筋力低下を自覚し、和式トイレから立ち上がれなくなり、階段昇降もできないようになった。同じころから足先にジンジンする感じを自覚するようになった。下肢の筋力低下は少し改善したが症状が長引くので受診した。意識は清明。脈拍68/分、整。血圧134/82mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。脳神経に異常を認めない。徒手筋力テストで左右差なく、大腿四頭筋は4、前脛骨筋は4で筋萎縮はみられない。表在感覚は正常で下肢振動覚は軽度低下し、四肢腱反射は消失している。自律神経障害はない。血糖98mg/dL、HbA1c 5.8%(基準4.6〜6.2)。心電図と心エコー図とに異常を認めない。運動神経伝導検査の結果を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
Guillain-Barré症候群
糖尿病性末梢神経障害
Charcot-Marie-Tooth病
アミロイドニューロパチー
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎

解答: e

109E50の解説

四肢腱反射が消失しており、下位運動ニューロンの障害を考える。下肢振動覚は軽度低下しているというが、表在感覚や自律神経に異常は見られていない。Guillain-Barre症候群〈GBS〉によくみられるパターンのニューロパチーだ。ただし、GBSの症状は一過性であり、3か月にも渡って続くことはない。本文でも「症状が長引くので」とあえて記載があり、この部分には出題者のやさしさを感じる。ここから慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〈CIDP〉を疑っていくこととなる。

引き続き画像の読解に進もう。運動神経伝導検査は108B60で出題があり。このときと同じく、伝導速度に異常はなく、伝導ブロックがみられている。本問ではそれに加え、時間的分散も指摘可能(右尺骨神経の肘下や右腓骨神経の腓骨頭で波形のピークが多相になっている部分がそれに該当する)。これらの所見から末梢神経障害があることが言える。が、正直ここまで読解できる必要があるのか疑問である。また、108回当時の出題では「尺骨神経の運動神経伝導速度の正常値は45m/秒以上」と明記してあったが、今回はそれがなく、本番で伝導速度まで評価できた受験生は皆無だったと思われる(1マスが3 or 5msと示してあるため、自分の手首や肘をみながらその距離を推測し、速度=距離÷時間の公式から導くことは一応可能)。問題を解くには画像が読めなくてもよいのであるが、真に本質を理解して解くためには相当な神経領域の習熟が必要な難問である。

a 上述のように3か月にも渡って進行はしない。また、前駆感染がみられることが多い。
b 血糖値、HbA1cが正常であり否定的。
c 前脛骨筋の萎縮がみられる。
d 自律神経障害がみられる。
e 正しい。CIDPについては107I39で布石あり。

正答率:74%

テーマ:慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〈CIDP〉の診断

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