109D35

81歳の女性。右季肋部痛と嘔吐とを主訴に来院した。昨日18時ころ、食事中に急に右季肋部から心窩部にかけての痛みが出現し、その後、痛みが増強し嘔吐を伴うようになったため午前1時に受診した。高血圧症で降圧薬を内服している。意識は清明。身長147cm、体重40kg。体温36.8℃。脈拍80/分、整。血圧178/90mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98%(room air)。腹部は膨満し、腸雑音は消失。右季肋部に圧痛を認め、呼吸性に移動する小児手拳大の腫瘤を触知する。筋性防御と反跳痛とを認めない。血液所見:赤血球318万、Hb 9.8g/dL、Ht 32%、白血球11,800(桿状核好中球52%、分葉核好中球30%、好酸球2%、好塩基球1%、単球4%、リンパ球11%)。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン2.5g/dL、総ビリルビン3.1mg/dL、直接ビリルビン2.3mg/dL、AST 56U/L、ALT 48U/L、LD 480U/L(基準176〜353)、ALP 454U/L(基準115〜359)、γ-GTP 132U/L(基準8〜50)、アミラーゼ115U/L(基準37〜160)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL。CRP 4.3mg/dL。腹部超音波検査と腹部単純CTとで胆嚢の腫大と胆嚢壁肥厚とを認める。腹部造影CTの動脈相と後期相で胆嚢壁の濃染を認めない。緊急に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。術中の写真(A)と摘出胆嚢の粘膜面の写真(B)とを別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
胆嚢癌
胆嚢穿孔
胆嚢捻転症
胆嚢ポリープ
胆嚢腺筋腫症

解答: c

109D35の解説

高齢女性の右季肋部痛と嘔吐。食事中に発症しており、パターン的には胆石症を考える。「呼吸性に移動する小児手拳大の腫瘤」は腫大した胆嚢であり、超音波検査で胆嚢壁肥厚もみられていることから胆嚢炎の存在はありそうだ。直接ビリルビン優位のビリルビン上昇やALP, γ-GTPといった胆道系酵素の上昇も矛盾しない。が、この想定は誤っている。それを以下説明したい。

まず非典型的なのは緊急に腹腔鏡下で胆嚢摘出術が行われている点。通常の胆石であれば、まずはドレナージを行い、症状が安定してから胆嚢摘出を行うはずだ。ポイントは「腹部造影CTの動脈相と後期相で胆嚢壁の濃染を認めない」という記載。これは胆嚢の虚血を示唆する。画像Aで胆嚢の著明な腫大と色の悪さ(虚血を示唆)がみられ、画像Bでも胆嚢全体が暗赤色を呈しており、高度な血流障害があったことが証明される。胆嚢は肝床部で肝臓に付着しているが、これが付着していない場合(遊離胆嚢)には胆嚢が頸部で捻転を起こし、虚血をみることがある。胆嚢捻転症が考えやすい。

a・d 腫瘍やポリープはみられない。
b 画像Aから穿孔はない。
c 正しい。上記の通り。
e 胆嚢腺筋腫症単独ではここまで激烈な症状をみない。

正答率:87%

テーマ:胆嚢捻転症の診断

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