109B48

79歳の男性。呼吸困難のため搬入された。10年前から高血圧症、脂質異常症および2型糖尿病で加療中である。1年6か月前に急性心筋梗塞を発症し、左前下行枝の完全閉塞に対しカテーテル治療を施行された。その後、抗血小板薬、利尿薬およびβ遮断薬を投与され、日常生活で心不全の症状を認めなかった。数日前から労作時の息切れを自覚し、数時間前から安静時にも強い呼吸困難を生じたため救急搬送された。意識は清明。脈拍104/分、整。血圧154/102mmHg。呼吸数24/分。SpO2 100%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。心尖部を最強点とするIV/VIの収縮期雑音を聴取する。両側の胸部にcoarse cracklesとwheezesとを聴取する。血液生化学所見:AST 22U/L、ALT 19U/L、LD 218U/L(基準176〜353)、CK 52U/L(基準30〜140)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉952pg/mL(基準18.4以下)。胸部エックス線写真(A)と心エコー図(B)とを別に示す。
呼吸困難の原因として考えられるのはどれか。
心室中隔穿孔
心タンポナーデ
三尖弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症
大動脈弁閉鎖不全症

解答: d

109B48の解説

高血圧症、脂質異常症、糖尿病、と冠危険因子がたくさん存在する高齢男性。1年半前に急性心筋梗塞〈AMI〉を発症している。その後は日常生活で異常を認めていなかったが、数日前から呼吸困難が発生したという。ポイントは心雑音。心尖部に収縮期雑音を聞いており、僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉を考える。画像Aでは蝶形陰影〈butterfly shadow)がみられ、肺水腫の存在が分かる。画像Bでは左室の拡張と、収縮期にも関わらず左室から左房への逆流とがみられ、MRに矛盾しない。AMIによりダメージを受けていた心筋が何かしらの影響で破綻し、僧帽弁の接合不全をきたしている可能性が高い。
a AMIの合併症ではあるが、エコーより否定的。
b 心嚢水の貯留や頻脈がみられるはず。
c 三尖弁閉鎖不全症〈TR〉では雑音を胸骨左縁第5肋間で聴取する。
d 正しい。上記の通り。
e 大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉では雑音を胸骨左縁第3~4肋間で聴取する。

正答率:94%

テーマ:心不全の原因病態

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