109A59

76歳の男性。咳嗽、喀痰、喘鳴および呼吸困難を主訴に来院した。3年前から階段を昇るときに呼吸困難を自覚していた。2週前に感冒様症状を自覚し、その後、湿性咳嗽、喘鳴および呼吸困難が持続するため受診した。喫煙は40本/日を50年間。意識は清明。身長169cm、体重61kg。体温37.0℃。脈拍112/分、整。血圧134/62mmHg。呼吸数28/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音に異常を認めない。呼吸音は両側にwheezesとcoarse cracklesとを聴取する。血液所見:赤血球506万、Hb 15.4g/dL、Ht 45%、白血球12,000(桿状核好中球5%、分葉核好中球74%、好酸球1%、好塩基球3%、単球8%、リンパ球9%)、血小板25万。血液生化学所見:尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉89pg/mL(基準18.4以下)。CRP 6.5mg/dL。動脈血ガス分析(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下):pH 7.43、PaCO2 39Torr、PaO2 64Torr、HCO3 25mEq/L。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B、C)とを別に示す。
まず行うべき治療はどれか。3つ選べ
抗菌薬の投与
副腎皮質ステロイドの吸入
抗ロイコトリエン薬の投与
副腎皮質ステロイドの内服
短時間作用型β2刺激薬の吸入

解答: a,d,e

109A59の解説

3年間の病歴と喫煙歴より慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉が考えやすい。画像Aにて肺の過膨張と透過性亢進・横隔膜の平低化がみられ、画像Bにて気腫性変化がみられる。COPDに矛盾しない所見である。本問のポイントは2週前の感冒。画像Cでは肺炎の所見もみられる。これを契機にCOPDが急性増悪したと考えられ、頸静脈怒張(右心不全徴候)も出現している。
a・e 正しい。細菌感染に対して抗菌薬を、呼吸困難に対して気管支拡張薬(β2刺激薬)を用いる。上述の過去問どおり。
b・d COPD急性増悪時に副腎皮質ステロイドを投与することで呼吸機能が改善することが知られている。問題はその投与経路だが、内服(d)が正しい。
c 気管支喘息やアレルギー性鼻炎に有効。

正答率:60%

テーマ:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉急性増悪の治療

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