107D36

85歳の女性。右下腹部痛を主訴に来院した。入浴後に急に右下腹部痛が出現し、次第に右大腿内側から膝にかけての疼痛を伴うようになった。悪心はあるが嘔吐はない。意識は清明。体温36.0℃。脈拍80/分、整。血圧182/90mmHg。呼吸数15/分。SpO2 99%(room air)。腹部は全体に平坦、軟で、反跳痛と筋性防御とを認めない。鼠径部に近い右下腹部に自発痛と圧痛とを認める。腸雑音はやや低下し、金属音を聴取しない。血液所見:赤血球373万、Hb 11.4g/dL、Ht 34%、白血球7,600、血小板18万。血液生化学所見:尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、LD 180U/L(基準176~353)、CK 56U/L(基準30~140)、アミラーゼ116U/L(基準37~160)。CRP 0.2mg/dL。腹部単純CTを別に示す。
対応として適切なのはどれか。
緊急手術
経過観察
注腸整復術
徒手的還納術
穿刺ドレナージ

解答: a

107D36の解説

大腿内側から膝にかけての疼痛をHowship-Romberg徴候と呼ぶ。この領域を支配する閉鎖神経の障害を考えたい。画像では矢印の部位に腸管構造の脱出を認めており、閉鎖孔ヘルニアの診断となる。血液検査での炎症反応は強くないが、自発痛と圧痛とがあり、腸蠕動も低下し始めていることから嵌頓している可能性が高い。
a 正しい。上記のように嵌頓が疑われるため、すみやかに手術を行う。
b 経過観察では腸管壊死が進行してしまう。
c 注腸整復術で腸管に圧をかけては病態が増悪してしまう。
d 閉鎖孔ヘルニアは解剖学的に徒手的還納術が困難。
e 腸管を穿刺するのは禁忌である。

正答率:77%

テーマ:閉鎖孔ヘルニアへの対応

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