107C28

次の文を読み、29、29の問いに答えよ。
84歳の男性。尿閉と下腹部痛とを主訴に来院した。
現病歴:以前から尿意を催しても排尿に時間がかかることを自覚していた。2、3日前から鼻水と咳とがあり、昨日の朝から市販の総合感冒薬を服用した。その後さらに尿が出にくくなった。今朝はほとんど尿が出ず、下腹部痛も自覚したため受診した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙は20本/日を60年間。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。体温36.4℃。脈拍76/分、整。血圧158/78mmHg。呼吸数14/分。SpO2 97%(room air)。頭頸部と胸部とに異常を認めない。腹部は下腹部が膨隆しており、やや硬い。軽度の圧痛がある。
現時点で実施する必要がないのはどれか。
尿検査
直腸指診
血液検査
腹部造影CT
腹部超音波検査

解答: d

107C28の解説

高齢男性の尿閉と下腹部痛。下腹部が膨隆しているのは膀胱である。強い尿意のある際に膀胱を触れればその部分を圧痛として自覚するのは誰でも同じこと。昨朝に総合感冒薬を服用した、とのことで成分である抗コリン薬やエフェドリンによりもともと存在した前立腺肥大症〈BPH〉が増悪し、尿閉をきたした症例と考えられる。
a 喫煙歴があり、膀胱癌など尿路系の悪性腫瘍を除外するのに有用。なお、前立腺癌は喫煙がリスクとならない、という事実については107B1で出題あり。
b BPHでは腫大した前立腺をふれる。一方、前立腺癌であれば石様硬の前立腺をふれる。
c 前立腺癌の除外にPSAを測定できる。また、クレアチニンなど腎不全の指標となる値も測定できる(慢性的な尿閉は腎後性腎不全のリスクである)。
d 誤り。現時点で造影CTまで実施する意義はあるまい。cでも示したように、血液検査が実施されておらず、腎不全の有無が不明である。万が一、高度な腎不全があった場合、造影剤使用により症状を増悪させかねない。
e 超音波により下腹部膨隆の内容が膀胱内に貯留した尿であることを示すことができる。また、腎エコーにより水腎症の有無も判定可能。

正答率:72%

テーマ:【長文1/2】尿閉の患者に実施する必要の無い検査

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