106D41

58歳の男性。1か月前からの下腿の浮腫を主訴に来院した。5年前に健康診断で糖尿病と高血圧症とを指摘されたため、自宅近くの診療所で食事療法の指導を受け、経口糖尿病薬とカルシウム拮抗薬とを処方されている。眼底検査で明らかな異常を指摘されていないという。意識は清明。身長166cm、体重70kg。体温36.4℃。脈拍84/分、整。血圧142/88mmHg。呼吸数14/分。眼瞼と下腿とに浮腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経学的所見に異常を認めない。尿所見:蛋白3+、潜血1+、沈渣に赤血球1~4/1視野、白血球1~4/1視野。血液所見:赤血球480万、Hb 15.1g/dL、Ht 46%、白血球5,000、血小板30万。血液生化学所見:空腹時血糖98mg/dL、HbA1c 6.0%(基準4.3~5.8)、総蛋白4.6g/dL、アルブミン2.5g/dL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、総コレステロール300mg/dL。腎生検のPAM染色標本を別に示す。
治療として適切なのはどれか。
免疫抑制薬の投与
ワルファリンの投与
インスリン治療の導入
副腎皮質ステロイドの経口投与
アンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与

解答: e

106D41の解説

5年前に健康診断で糖尿病と高血圧とを指摘され内服治療をしており、1か月前から下腿の浮腫が出現している。尿蛋白3+、アルブミン2.5g/dlであり、ネフローゼ症候群の診断基準を満たしている。腎生検のPAM染色標本ではKimmelstiel-Wilson病変を認め、糖尿病性腎症の診断である。
a・d 易感染性が悪化するため、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドは使用しない。
b 血栓徴候もなく、ワルファリンなどの抗凝固薬投与は必要ない。
c 現在は空腹時血糖98mg/dl、HbA1c 6.0%と糖尿病にしてはコントロール良好であり、現時点でインスリン治療は必要ない。
e 正しい。腎保護作用を狙い、レニン・アンジオテンシン系〈RAS〉阻害薬を用いる。クレアチニンが高値を呈する例では RAS 阻害薬が使用できないが、本症例では 0.9mg/dl と正常値であり問題ない。

正答率:69%

テーマ:糖尿病性腎症の治療

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