106C30

次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
62歳の女性。持続性の腹痛を主訴に来院した。
現病歴:6か月前に食欲不振と全身倦怠感とを主訴に受診し、精査の結果、肺癌とその肝転移であると診断された。抗癌化学療法などの積極的な治療を希望せず、外来通院することとなった。2週前から右上腹部に持続性の疼痛が出現し、次第に増強した。疼痛は体動によって増悪した。外来で非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉が投与され、一時的に疼痛は軽減したが、1週前から再び増悪したため来院した。2週前までは日中は車椅子で生活できていたが、最近は疼痛のために室内の移動も困難となり、1日中ベッドに横になっていることが多かったという。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:娘夫婦と同居。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が大腸癌のため72歳で死亡。
現 症:意識は清明。身長152cm、体重42kg。体温36.2℃。脈拍76/分、整。血圧118/76mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を鎖骨中線上で6cm触知する。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球382万、Hb 10.6g/dL、Ht 36%、白血球5,300、血小板17万。血液生化学所見:血糖98mg/dL、総蛋白6.1g/dL、アルブミン2.9g/dL、尿素窒素32mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、総ビリルビン1.2mg/dL、AST 78U/L、ALT 66U/L、LD 477U/L(基準176~353)、ALP 483U/L(基準115~359)、γ-GTP 132U/L(基準8~50)、Na 139mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。
疼痛コントロール目的で入院の上、オピオイドの投与を開始することとなった。
対応として適切なのはどれか。
直ちに非経口薬を用いる。
NSAIDsの投与を中止する。
疼痛時の追加投与は行わない。
投与開始から制吐薬を併用する。
便秘が出現した場合は中止する。

解答: d

106C30の解説

肺癌とその肝転移であると診断された62歳の女性である。抗癌化学療法などの積極的な治療を希望せず、外来通院することとなったが、右上腹部に持続性の疼痛が出現し、次第に増強した。疼痛コントロール目的で入院の上、オピオイドの投与を開始することとなった。
a オピオイド投与は経口投与(by mouth)が原則である。
b オピオイドとNSAIDsとは併用が原則であり、投与を中止する必要はない。
c 可能な範囲での増量による疼痛コントロールは行うべきである。
d 正しい。オピオイドのよる副作用として嘔吐・便秘は高頻度に生じるため、投与開始から制吐薬を併用することは重要である。
e オピオイドによる副作用は高頻度に出現するため、処方変更や緩下薬により対処し、中止は不要である。

正答率:93%

テーマ:【長文1/2】肝転移のある肺癌患者のターミナルケア

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