106A60

4歳の男児。5日前から続く強い腹痛と血便とを主訴に来院した。昨日から尿量が減少したという。体温38.2℃。脈拍120/分、整。血圧120/86mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%(room air)。顔面は蒼白である。眼球結膜に軽度の黄染を認める。前脛骨部にpitting edemaを認める。尿所見:蛋白3+、糖(-)、沈渣に赤血球多数/1視野。血液所見:赤血球298万、Hb 7.0g/dL、Ht 23%、白血球23,000(桿状核好中球8%、分葉核好中球55%、単球7%、リンパ球30%)、血小板5万。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認める。血液生化学所見:尿素窒素40mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL(基準0.2~0.4)、総ビリルビン3.5mg/dL、AST 45U/L、ALT 16U/L、Na 128mEq/L、K 5.5mEq/L、Cl 97mEq/L。
保護者への説明で適切なのはどれか。3つ選べ
「抗菌薬が有効です」
「まず、点滴で治療を開始します」
「脳に障害が出ることがあります」
「病原菌のつくる毒素が原因です」
「ほとんどの患者さんには透析が必要になります」

解答: b,c,d

106A60の解説

末梢血塗抹標本の破砕赤血球がポイントである。腹痛と血便という前駆症状から、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉を疑う。溶血性貧血、腎障害、血小板減少という3徴候もみられている。
a 抗菌薬投与を行うとHUSの原因となる腸管出血性大腸菌が死ぬことで毒素が体内に広がってしまう。従って基本的には使用しない。
b 正しい。腎障害の治療として輸液を行う。
c 正しい。尿毒症によるダメージや、脳の微小血管に血栓ができることにより脳に後遺症が出ることがある。
d 正しい。腸管出血性大腸菌の産生するベロ毒素が原因となる。
e 透析で尿毒症や電解質異常を速やかに治療することができる。多くの患者は透析から抜けることができる。

正答率:77%

テーマ:小児の溶血性尿毒症症候群〈HUS〉の保護者への説明

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