102E59

30歳の初妊婦。妊娠37週。5時間前に少量の性器出血の後、規則的な子宮収縮が始まり次第に強くなったため来院した。28歳時に子宮筋腫核出術を受けた後、不妊治療で妊娠が成立し、妊婦健康診査を受けていた。1週前の妊娠36週時の診察では、血圧140/92mmHg、尿蛋白1+であったが、胎児発育は正常で胎児心拍数モニタリングでは異常を認めなかった。意識は清明。身長160cm、体重70kg。体温37.0℃。脈拍92/分、整。血圧142/94mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。右上腹部に軽度の圧痛を認める。5分間隔で40秒間の子宮収縮を認めるが、間欠期には子宮は軟らかく圧痛を認めない。Leopold診察法第2段で大きくて板状の塊を右手に触れる。腟鏡診では子宮口から少量の出血を認める。内診では子宮口は軟らかく、前方に位置し、4cm開大しており胎児の頭髪を触れる。児頭の高さはSp±0である。尿所見:蛋白1+、糖1+。血液所見:赤血球350万、Hb 9.8g/dL、Ht 34%、白血球9,600、血小板9万。血液生化学所見:空腹時血糖105mg/dL、HbA1c(NGSP値) 7.1%(基準4.6~6.2)、総蛋白6.0g/dL、アルブミン2.7g/dL、尿素窒素19.0mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸5.8mg/dL、AST 50U/L、ALT 40U/L、LD 400U/L(基準176~353)。CRP 0.6mg/dL。
この患者で正しいのはどれか。2つ選べ
遷延分娩である。
子宮破裂の疑いがある。
妊娠高血圧腎症である。
胎児は第2頭位である。
妊娠糖尿病の疑いがある。

解答: b,cまたはc,e

102E59の解説

妊娠37週の初産婦。陣痛が発来している。妊娠経過より患者の状態を評価していく問題。
a 5分間隔で40秒間の子宮収縮を認めることから分娩は開始しているが、その後の時間の記載はない。5時間前に産徴があったとの記載より分娩開始から5時間以上は経過していないことが読み取れる。よって現時点では少なくとも遷延分娩とは言えない。
b △。28歳時に子宮筋腫核出術を受けており、現在子宮収縮時のみ右上腹部に軽度の圧痛を認めている。破裂までは至っていないが、切迫子宮破裂に至る過程である可能性は否定できない。「疑いがある」という選択肢である以上、バツにすることは難しい。
c 正しい。1週前より高血圧と尿蛋白を指摘され、現在も血圧142/94mmHg、尿蛋白1+であることから、(軽症)妊娠高血圧腎症である。
d Leopold診察法第2段で大きくて板状の塊を右手に触れることから、胎児は第1頭位である。
e △。HbA1c 7.1%(NGSP値;出題当時はJDS値で6.7%であった)と6.5%を超えており、妊娠中の明らかな糖尿病と診断される。が、今まさに陣痛開始したタイミングで敢えてこの診断を下すことにどこまで意味があるのか疑問である。本来、妊婦と糖代謝異常については妊娠初期〜中期にスクリーニングをし、評価を行うのが通常である。36週時の診察で糖代謝について何の言及もなく、たった1週で一気にここまでHbA1cが上昇することは稀だ。しかるに、もともと妊娠糖尿病があった可能性は否定できず、「疑いがある」という選択肢をバツにすることは難しい。
※2015年に妊婦と糖尿病についての基準が一新された。これを受けて当時の正答であるeが必ずしも正答とは言い切れなくなった。ここではcを絶対的正解とし、もう1つはbまたはeのいずれを選んでも正答とみなすこととする。

正答率:62%

テーマ:妊娠37週の初産婦の陣痛発来後の評価

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