101E13

次の文を読み、13~15の問いに答えよ。
63歳の男性。意識障害のために搬入された。
現病歴:2か月前から表情がこわばり、口数が減り、動作も緩慢になった。食事量が減り、日本酒1合を毎晩飲む習慣がついた。休むと迷惑をかけると言って仕事には出ていたが、判断力が鈍り、効率が上がらず、ぐったりして帰宅する。妻が病院受診を勧めると、支払い額を気にしてためらう。20年前の仕事上での些細なミスを思い出して「取り返しのつかないことをしてしまった」とつぶやくことがあった。本日夕食後、妻が近くの親類宅まで出かけて1時間後に帰宅すると、奥の部屋で倒れていて、そばにビールの空き缶が1つと妻が時々用いる睡眠薬の空シート20錠分があった。シートの薬は長時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であることが判明した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:高校卒業後、地方公務員としてまじめに勤務し、60歳で定年となってからは小企業で事務仕事に就き、同僚の信頼は篤かった。
現 症:呼びかけに反応しないが、痛み刺激にかろうじて開眼する。体温36.9℃。脈拍64/分、整。血圧118/82mmHg。全身に外傷を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はほぼ平坦で、肝・脾を触知しない。
生じる可能性が最も高いのはどれか。
脳出血
心停止
誤嚥性肺炎
消化管出血
全身けいれん

解答: c

101E13の解説

2か月前からのエピソードはうつ病を考えさせる。「支払い額を気にしてためらう」のは貧困妄想、「取り返しのつかないことをしてしまった」と思うのは罪業妄想。さて、この患者でベンゾジアゼピン系睡眠薬の大量内服がみられた。自殺企図であろう。リスボン宣言に基づき、ただちに救命に努めることとなる。
a・d 特に易出血性になるわけではない。
b 最終的に心停止する可能性はあるが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の大量内服では呼吸抑制がみられやすい。
c 正しい。意識障害下では誤嚥をきたしやすい。これにより誤嚥性肺炎を生じる可能性は高い。
e ベンゾジアゼピン系薬は抗けいれん薬としても用いられており、全身けいれんはむしろきたしにくい。
※誤嚥性肺炎は数分の単位で完成する病態ではなく、意識障害で救急搬入された患者に対して選ばせる選択肢としては若干奇問に思われる。呼吸抑制を選択肢に入れて、これを正答扱いさせたほうが臨床的な良問となったはずだ。

正答率:59%

テーマ:【長文1/3】意識障害の患者に生じやすい症状

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