62歳の女性.言動の異常を認めた家族に伴われ来院した.4ヵ月前から「タヌキがいろいろなことを言っている.」と言い,応接間の机の上にご飯や千円札をのせるといった行動がみられるようになった.家族が理由を尋ねると,「『私は東京のタヌキです.孫と一緒に来ました.おなかが空いているので何か下さい.そうしないと,あなたの家に祟りがありますよ.』といったような声が聞こえてくる.」と言う.精神疾患の既往はない.身長155cm,体重48kg.意識は清明.神経学的身体診察では異常を認めない.日常生活動作〈ADL〉は自立している.頭部CTでは年齢相応の変化以外に異常はない.
この疾患で正しいのはどれか.
a 高齢はリスク要因である.
b 感情鈍麻が存在する.
c 認知症の症状が存在する.
d 抗不安薬による薬物療法を行う.
e 予後は不良である.
いつもお世話になっております。
まだここには載っていないようですが、あたらしいマイナー⑤・精神科のp.38【問題54】について質問があります。
解説では「単一のタヌキの妄想のみ」ということでしたが、統失との鑑別の一つである「幻覚は認めない」に当てはまらないと思いました。
明らかに幻視や幻聴が出ているのに、これらを全部「単一のタヌキの妄想」で片付けたら、「近所の人が悪口を言っている、殺そうとしている」なども「単一の近所の人の妄想」になるのではないかと思いました。
統失の特徴の一つである幻聴が重い気がして、これをスルーして「タヌキの妄想のみ」という解説だったのがイマイチピンときません。この場合、幻聴が出ている点についてはどう考えればよいのでしょうか。皆さんのご意見、よろしくお願いいたします。
学生です。
幻覚なのか妄想なのかは判断がつきにくいことも多いと思います。というのも、患者の中でタヌキの声が本当に聞こえているのなら、幻聴で、(誰も話していなくても)タヌキが話しているのだと思い込んでるのなら、妄想だと思います。
しかしながら、それは客観的に判断することは非常に困難かと思います。
今回の問題では、患者が精神疾患の既往もない高齢者であること、人格障害などがでていないことから、統合失調症による幻聴ではなく、妄想性障害による妄想であると判断すべきです。
医学部4年の者です。
確かにテキストには幻覚の有無が鑑別点として挙げられていますが、妄想の主題に付随する幻覚であるのならば、妄想性障害の診断から外れることはないと思います。今回はタヌキの妄想に関連する幻聴なので、DSMという操作主義的な診断に依拠すれば、妄想性障害と診断しても矛盾はないと考えました。
また、仮にスキゾフレニアを想定して問題を解くと、高齢がリスクという選択肢を正解にできず、また、高齢初発のスキゾフレニアは予後良好なことからも予後不良は選択できず、やはり出題者は妄想性障害を意図して問題文を作成したものと考えました。
詳しくはDSM-5の原典にあたってみることをお勧めします。
厳密に言えば、人格障害とスキゾフレニアは疾患概念が異なり、果たして人格障害の有無によってスキゾフレニアか否かを判断できるのか疑問に思います(例えばスキゾイドパーソナリティ障害とスキゾフレニアはDSM-5では別々に扱われているかと思います)。
国試的には人格障害の全てを把握するのはオーバーワークだと思いますし、DSMが全てだとも思いませんが…。
精神科に詳しい方の解説を頂きたいです。
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