19歳の女性。交通事故で大腿骨骨折のため近医に入院した。この病院には産婦人科はない。入院後下腹部痛を訴えたため産婦人科医に往診を依頼した。超音波検査で子宮内に心拍のある胎児を認め、妊娠12週相当の切迫流産と診断された。患者は妊娠中絶を希望している。この患者の人工妊娠中絶について正しいのはどれか。
a 産婦人科医であれば施行できる。
b 患者の親権者の同意があれば施行できる。
c 完備した手術室があれば母体保護法指定医が往診し施行できる。
d 胎児に明らかな奇形を認めれば母体保護法指定医でなくても施行できる。
e 胎児心拍が停止すれば母体保護法指定医でなくても施行できる。
正解はeとなっていますが,cが誤りになる理由がよくわかりません。
講義では母体側の条件と施術医の条件に焦点を当て,
cの「完備した手術室があれば」という部分が母体側の条件として不適当である,と解説しています(そのように自分は解釈しました)。
しかし常識的に不十分な設備で手技を行うことはないはずですし,
母体側の条件についても患者の詳細な健康状態,経済状況などが記載されておらず「患者は妊娠中絶を希望している」時点で
それ以上の妥当性の議論はしようがなく,母体側の条件を解答の根拠にはできないと考えます。
またeについて,内容の事実関係自体は正しいように思いますが,胎児が死んでしまうと
「この患者の人工妊娠中絶について」という文意から外れるので,設問に対して不適切な内容の選択肢であると考えます。
cが不適切な理由
eが適切な理由
以上の2点について,よろしくお願いします。
「cが不適切な理由」
「c. 完備した手術室があれば母体保護法指定医が往診し施行できる。」
私も最初にこの問題を解く際に質問者さんと同様に、cの選択肢が誤りであることに違和感を感じました。
私なりのこの問題の解き方としての解釈をお示しします。
●まず、人工妊娠中絶を行うには、下記の①と②の両方の条件を満たす必要があります。
①身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるケースまたは、姦淫されて妊娠したケースであること。(母体側の条件)
②母体保護法指定医(施術医の条件)
私は、問題文とcの選択肢の情報だけでは、①の条件を満たしていない(=①の条件を満たしているという記載がない)ため、人工妊娠中絶は施行できないと考えました。
もちろん、質問者さんのおっしゃる様に、患者の詳細な健康状態、経済状況などが記載されてはいません。
しかし、人工妊娠中絶を行うには①と②の条件を満たす情報が記載されていて初めて、人工妊娠中絶が行えると考えました。
情報が記載されていないだけで、「実は条件を満たしてるかも…」と考えてしまってはペーパー試験の問題を解くという観点から相応しくないのでは、と私は考えるようにしています。
「①の条件を満たすという条件がどこにも記載されていない。=人工妊娠中絶を行うには情報が不十分なのでcの選択肢は×」という考え方はいかがでしょうか。
●次に「完備した手術室があれば」という文言についてです。
完備した手術室があれば、人工妊娠中絶が行えるのではないです。
上記の通り、①と②の条件を満たしたら、人工妊娠中絶が行えるのです。
とにかく、①と②の条件を満たさなければならないのです。
完備した手術室があるに越したことはないでしょうが、①と②の条件を必ず満たさなければならないのです。
「eが適切な理由」
「e. 胎児心拍が停止すれば母体保護法指定医でなくても施行できる」
確かに、問題文の最後に「この患者の人工妊娠中絶について正しいのはどれか。」と記載されており、eの選択肢では人工妊娠中絶ではなく、死児の娩出についての内容となっています。
この問題で作者が受験生に問いたいのは、人工妊娠中絶(やそれと同じような死児の娩出)の条件についてではないかと私は考えるようにしました。
「eの選択肢の内容は、人工妊娠中絶でない」、というポイントについては、作者は気にしていないと考えます。
この問題は、第97回医師国家試験(97I04)の古い問題ということで、問題文や選択肢の作り方の練りが甘いのだろうと留めて、あまり気にしなくてもよいのではと私は自分自身に言い聞かせています。
長文駄文となってしまい申し訳ありません。
質問者さんのご理解の一助となれば幸いです。
ありがとうございます
「cが不適切な理由」
97回当時から都道府県医師会の母体保護法指定医師の指定基準で定められているようです。指定医登録の際に指定医師個人の指定と、施設の指定が必要なようです。
東京都医師会 母体保護法指定医師の指定基準
https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/application/pdf/botai_kijun20200707.pdf
5ページ目
11 指定医師の遵守すべき事項
(6)指定医師は母体保護法第 14 条の人工妊娠中絶を施行するに当たっては、常に次のことを遵守しなければならない。
①人工妊娠中絶手術の適応を厳守すること。
②人工妊娠中絶手術の実施は、指定医師として指定を受けた施設内のみとし、往診先等においては行わないこと。
③必要に応じ術後の受胎調節の指導を実施し、少子化傾向に鑑み、初産平均年齢を引き下げるよう努力するとともに家族計画を指導すること。
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