死体現象と生活反応

96B24
死体検案時の外表所見において生活反応と判断できないのはどれか.
a 水中死体における鼻口腔内の微細白色泡沫液
b 焼死体における第Ⅲ度の熱傷
c 一酸化炭素中毒死の鮮紅色の死斑
d 青紫色を示す皮下出血
e 痂皮を伴った表皮剝脱

上記の国家試験の過去問で正答はbということには納得しているのですが、cの選択肢について疑問があるので質問させていただきます。
medu4のあたらしい公衆衛生によると、生活反応は生体にしか起こらない反応であり、本問の選択肢cについても呼吸は生きている時にしかしないので生活反応であることがわかります。しかし、鮮紅色の死斑はテキストの早期死体現象の死斑の欄に記載があります。死体現象は死の直後から始まる人体の物理的、化学的生物学的変化です。鮮紅色の死斑は生体にしか起こらない生活反応と死の直後から始まる死体現象のどちらなのでしょうか。もし、生活反応であり、死体現象でもあるなら矛盾している気がします。

回答3件

  • ((((;゚Д゚)))))) さん
     
    なるほど。言われてみるとこれは割と不親切な問題かもしれませんね。
    2020 あたらしい公衆衛生 p.251 16.3 死体現象 の項目では、生活反応は「呼吸や心拍動に基づき、生体にしか起こらない反応」としか言及されていないため、
    そもそも論として 『「死斑」は生活反応なのか??』 という疑問が生じたのだと推察します。
     
    話は少し逸れますが、
    人の死というものは、死後の世界における権利・義務関係に多大な影響を及ぼします。財産の相続問題は卑近な例ですし、交通事故で死亡した場合には、加害者に対して損害賠償を請求する損害賠償請求権が相続されますし... 。
    人の死に伴うこれら民法上の諸問題を論ずる上で、その人が いつどの時点で死亡したのか という題目は避けては通れない事柄であり、それ故に 医学においては死亡時刻を確定させることが大変重要視されているわけですね。
     
    上記の観点に立つなら、生活反応というのは「生体にのみ起こる反応」という表面上の字義よりも、この人がいつ死亡したのかを推定・判定するための 「ツール」 としての意味合いの方に力点が置かれるべきであると私自身は考えています。
    試しに、ここでは生活反応の定義として百科事典マイペディアのものを援用させていただきます:
    「傷害その他の作用に対して、生体のみに起こる反応。 死体にこの反応による変化が存在しているか否かによって、これらの作用が加えられたのが生存中か死後かが判定される。
    https://kotobank.jp/word/生活反応-85605
     
     
    さて、本題に戻ります。
     
    a. 水中死体における鼻口腔内の微細白色泡沫液
    →呼吸、あるいは、溺れてもがいた結果として泡沫が出現していると考えられるので、生活反応。
    死亡したのは水中であり、入水自殺と溺殺の両方が考えられますが、泡沫が出現していなければ他殺の可能性が極めて高くなるので、両者で法的関係が大きく異なってくるよねといった具合です。
     
    b. 焼死体における第Ⅲ度の熱傷
    →熱傷は第Ⅰ度<紅斑形成>、第Ⅱ度<水疱形成>、第Ⅲ度<壊死>、第Ⅳ度<炭化>の四段階に分けられます。第Ⅰ度と第Ⅱ度は生活反応で確定ですが、壊死や炭化は人の生死に関わらず形成され得ますから、第Ⅲ度の熱傷を以て生活反応とすることはできません。
     
    c. 一酸化炭素中毒死の鮮紅色の死斑
    →先ず強調しておきたいのは、普通に死斑といえば早期死体現象です。生活反応ではありません。 死斑は重力に従った血液の就下であり、死後形成されるものなので。
    しかし CO中毒 によるという但し書きがあれば話は変わってきます。これは、COを呼吸により吸い込んだという証左であって、生存中にCOという外的作用が加わったことを裏付けているからです。
    もし ((((;゚Д゚)))))) さんが字義通りではなく、その法医学上の重要性から解釈するべきだという管見にご賛同いただけるのであれば、CO中毒による死斑は「早期次第現象」(死斑だから)であり、且つ「生活反応」(COを吸入しているから)であることに理解を示していただけるはずです。
     
    注1)ちなみにウィキペディアでは、一酸化炭素中毒死または青酸中毒死に発生する鮮紅色の死斑は、生活反応の一例として提示されています。https://ja.wikipedia.org/wiki/生活反応
    注2)本来ならば、生活反応(呼吸活動)があったことを "保証" するもの、とした方が良いのかもしれませんが、まぁそこまでの厳密性は求められていないだろうと思います...
     
    d.eに関しては以下略で。
     
     
    お役立ていただければ幸いです。

    • 追伸
      この問題で同じ疑問を抱かれた学生さんのために、質問を編集して「問題番号」の欄に[[96B24]]を紐付けておいた方が良いかと思います☺️

    • いったち さん

      回答ありがとうございます。いったち さんのおっしゃる通り、死斑が生活反応反応なのか?と疑問に思っておりました。しかし、一酸化炭素中毒による死斑については、生活反応であり、早期死体現象でもあるということを理解しました。分かりやすく解説してくださって本当にありがとうございました。

      追伸について
      トピックを新規作成する際に問題番号を入力したのですが、おそらく以下の理由で反映されていないのだと思います。
      ※99回以前の問題はデータベース上に存在しません。入力しても無効です。

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