118E45

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
68歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。2年前から歩き方が酔っ払っているようだと家族に指摘されている。同時期から歩行時にふらついてしまうため、足を広げて歩くようになった。暗いところと明るいところで歩行のふらつきに違いはない。椅子からの起き上がりは可能だが、6か月前に起立時にふらついて転びそうになったことがある。階段を昇ることはできるが、階段を降りる際には手すりを使うようになった。書字動作がしにくくなり、線をまっすぐ引けなくなった。箸は握れて茶碗も持てるが、目的の場所に上手く箸を運べなくなった。徐々に話し方が酔っ払った様に不明瞭になった。歩行困難が進行し、2か月前に方向転換の際に転倒した。四肢のしびれ及び感覚の鈍さは自覚していない。徐々に症状が増悪するため受診した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長168cm、体重60kg。体温36.1℃。脈拍64/分、整。血圧128/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球510万、Hb 14.2g/dL、白血球8,300、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 26U/L、ALT 20U/L、LD 180U/L(基準124~222)、γ-GT 45U/L(基準13~64)、CK 70U/L(基準59~248)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、血糖92mg/dL、HbA1c 5.0%(基準4.9~6.0)、総コレステロール152mg/dL、トリグリセリド50mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L。心電図で異常を認めない。胸部、腹部および頸椎エックス線写真で異常を認めない。
この患者にみられるのはどれか。
痙縮
失行
運動失調
運動麻痺
不随意運動

解答: c

118E45の解説

【ポイント】
失調性歩行がみられている高齢男性。「暗いところと明るいところで歩行のふらつきに違いはない」(実質的なRomberg徴候陰性)とのことで、深部覚障害は否定的。書字動作や箸の操作にも困難が生じており、上肢の失調もみられる。失調性構音障害(酔っ払った様な不明瞭な話し方)もみられている。小脳性運動失調である。与えられた情報だけから診断名を確定することは困難であるし、設問設定上も診断確定までは求められていない。

【選択肢考察】
a 脳性麻痺などでみられる。
b 頭頂葉障害などでみられる。
c 正しい。上記の通り。
d 錐体路障害などでみられる。
e 錐体外路障害などでみられる。

正答率:97%

テーマ:小脳失調でみられる症候

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