116C63

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

62歳の女性。腰痛、発熱および嘔吐を主訴に救急車で搬入された。
現病歴:3日前から間欠的な右腰痛を自覚していた。今朝起床時から悪寒も自覚するようになった。夕刻になり発熱と繰り返す嘔吐も出現し、動けなくなったため救急車を要請した。
既往歴:30年前に子宮筋腫摘出術。
生活歴:夫と二人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:両親が高血圧症であった。
現 症:意識レベルはJCS I-1。身長158cm、体重55kg。体温38.9℃。脈拍110/分、整。血圧88/54mmHg。呼吸数26/分。SpO2 99%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。右腰部に叩打痛を認める。腸雑音はやや減弱している。四肢に浮腫を認めない。皮膚には皮疹を認めない。
検査所見:尿所見:黄褐色でやや混濁、比重1.020、pH 5.5、蛋白+、糖(−)、潜血3+、白血球+、ケトン(−)、亜硝酸+。血液所見:赤血球407万、Hb 13.2g/dL、Ht 38%、白血球12,600(好中球77%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球15%)、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 42U/L、ALT 40U/L、LD 228U/L(基準120~245)、ALP 105U/L(基準38~113)、γ-GT 45U/L(基準8~50)、CK 131U/L(基準30~140)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖120mg/dL、Na 132mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 104mEq/L、Ca 8.5mg/dL。CRP 2.2mg/dL。乳酸2.5mg/dL(基準5~20)。動脈血ガス分析(room air):pH 7.43、PaCO2 25Torr、PaO2 88Torr、HCO3- 16.5mEq/L。
腹部単純CTを別に示す。

最初に行うべき対応はどれか。

アドレナリン静注
NSAID内服
経鼻胃管留置
生理食塩液輸液
尿管ステント留置

解答: d

116C63の解説

【プロセス】
①3日前から間欠的な右腰痛
②本日から悪寒・発熱・繰り返す嘔吐・動けなくなった
③血圧88/54mmHg
④右腰部に叩打痛
⑤尿は黄褐色でやや混濁、潜血3+、白血球+、亜硝酸+
⑥腹部単純CTにて右腎盂の拡張(左の写真)と右腎盂尿管移行部の尿路結石(右の写真)
☞④より尿路結石と水腎症を疑うが、⑥にて確定できる。尿路感染症をきたし、①②⑤をみたのだろう。乳酸値の上昇はないが、③より敗血症性ショックに至りつつあると考えられる。

【選択肢考察】
a 心停止時に行われる。
b 消炎鎮痛作用があるも、現状はかなり重篤であり、NSAIDではあまりに無力である。
c 腸閉塞時の消化管減圧などに有効。「腸雑音はやや減弱」とあり、炎症波及による軽度麻痺性イレウスの存在は否定できない。が、尿路結石と水腎症への対応が優先される。
d 正しい。血圧低下もあり、現状ではまず輸液が望まれる。
e 行うにしても全身状態が安定してから。「最初に行うべき対応」ではない。

正答率:65%

テーマ:【長文1/3】敗血症性ショック患者に最初に行うべき対応

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