115F40

74歳の男性。1週前に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を施行した。術後経過は良好で退院を目指し、一般病棟でリハビリテーションに励んでいた。昨日から食欲不振があり、今朝から息切れと全身倦怠感を訴えている。意識は清明。体温36.7℃。脈拍100/分、整。血圧94/74mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。頸静脈怒張を認める。心音は減弱。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、胸部正中に手術痕を認める。血液所見:赤血球352万、Hb 10.7g/dL、Ht 31%、白血球8,700、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.3g/dL、総ビリルビン1.2mg/dL、AST 31U/L、ALT 52U/L、LD 331U/L(基準120~245)、CK 50U/L(基準30~140)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、Na 136mEq/L、K 5.1mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 1.2mg/dL。胸部エックス線写真(A)及び胸部単純CT(B)を別に示す。

症状に最も関連している病態はどれか。

気胸
貧血
縦隔炎
胸水貯留
心嚢液貯留

解答: e

115F40の解説

【プロセス】
①高齢男性
②1週前に開心術
③昨日から食欲不振・息切れ・全身倦怠感
④血圧94/74mmHg
⑤頸静脈怒張
⑥心音減弱
⑦胸部エックス線にて心拡大
⑧胸部単純CTにて心嚢水と胸水貯留
⑧より心タンポナーデとそれに伴う右心不全が考えやすい。③〜⑦のすべてが矛盾なく説明できる。術中の心膜組織損傷などによる②の合併症として出現した、遅発性心タンポナーデが疑われる。

【選択肢考察】
a 胸部エックス線写真にて気胸は指摘できない。
b やや貧血気味ではあるも、Hb 10.7g/dLと10は超えており、本症例のメインとなる問題ではない。
c 発熱がなく、炎症の存在は考えにくい。また、CTでも縦隔炎は指摘できない。
d たしかに胸水は貯留しているが、これは心タンポナーデに起因する右心不全が原因の可能性が高い。
e 正しい。心嚢液が貯留し、心タンポナーデを呈している。

正答率:98%

テーマ:開心術後に出現した心嚢液貯留の診断

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし