115A45

54歳の女性。倦怠感を主訴に来院した。進行卵巣癌のため10日前に外来で薬物による抗癌治療を受けた。その後、水分は多めに摂取するようにしていたという。3日前から倦怠感が出現したため受診した。意識は清明。脈拍60/分、整。血圧134/86mmHg。皮膚のツルゴールの低下を認めない。下腹部に径11cmの腫瘤を触知する。腹水はない。血液生化学所見:クレアチニン0.8mg/dL、尿酸3.2mg/dL、Na 124mEq/L、Cl 102mEq/L、コルチゾール6.6μg/dL(基準5.2~12.6)。血清浸透圧は250mOsm/L(基準275~288)で低値、尿浸透圧は390mOsm/Lで高値、尿中Naは45mEq/Lで高値であった。胸部エックス線写真で心拡大を認めない。

血清浸透圧の低下に対してまず行うのはどれか。

水分の制限
生理食塩液の点滴投与
5%ブドウ糖液の点滴投与
塩化ナトリウムの経口投与
カルシウム拮抗薬の経口投与

解答: a

115A45の解説

【プロセス】
①進行卵巣癌のため抗癌治療を受けた
②水分は多めに摂取するようにしていた
③3日前から倦怠感
④血圧低下なし・皮膚ツルゴール低下なし・腹水なし
⑤クレアチニン正常であり腎機能に異常は考えにくい
⑥コルチゾール正常で副腎皮質機能に異常は考えにくい
⑦血中Naと血清浸透圧は低値
⑧尿浸透圧と尿中Naは高値
⑨心拡大はなく心不全はきたしていない
⑦⑧から「血はうすく、尿は濃く」というスローガンが思い出せればADH不適合分泌症候群〈SIADH〉の診断に至ることと思う。③はSIADHの典型的な症候であるし、④⑤⑥⑨は診断基準を満たすための記載と考えられる。原因は①であろう。癌自体の随伴症状または抗癌治療の副作用としてADHの不適合分泌が起こってしまった可能性が高い。②の記載からは過去問頻出の標準治療である水制限をしてほしいという出題者の意図を感じる。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b 3%食塩水をフロセミドと合わせて治療に用いることはあるが、生理食塩水は使わない。
c 低ナトリウム血症が増悪するため、逆効果。
d 食塩投与もSIADH治療の1つではあるが、今回は②の記載より水制限を優先させる。
e 高血圧症に対する治療である。

正答率:92%

テーマ:ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉への対応

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