114F60

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

77歳の男性。全身倦怠感と物忘れを主訴に来院した。

現病歴:高血圧症で内服加療中。半年前から食後の全身倦怠感が出現した。またほぼ同時期からときどき物を置いた場所がわからなくなるようになった。その後も症状は持続し、不安、不眠および食欲低下が出現し、3か月で2kgの体重減少があった。立ち上がり時や歩行時にふらつきの自覚はなかったという。

既往歴:30歳時に虫垂炎で虫垂切除術。

生活歴:妻と2人暮らし。65歳で退職。日常生活は自立しているが、症状出現後は外出機会が減少した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。几帳面な性格である。2か月前に運転免許証を自主返納した。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長165cm、体重58kg。体温36.0℃。脈拍76/分、整。血圧126/66mmHg。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で下肢筋力低下を認める。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球413万、Hb 13.3g/dL、Ht 38%、白血球4,500、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.8g/dL、AST 20U/L、ALT 18U/L、CK 53U/L(基準30〜140)、尿素窒素22mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、空腹時血糖94mg/dL、HbA1c 5.8%(基準4.6〜6.2)、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 105mEq/L、TSH 1.56μU/mL(基準0.2〜4.0)FT3 2.3pg/mL(基準2.3〜4.3)、FT4 1.3ng/dL(基準0.8〜2.2)。CRP 0.04mg/dL。頭部MRIで軽度の脳萎縮と両側大脳半球白質や視床に軽微な慢性虚血性変化を認める。脳の主幹動脈に有意狭窄や動脈瘤を認めない。

食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか。

食後60分の血圧低下
食後60分の血糖値上昇
6分間歩行でのSpO2の低下
吸気時の収縮期血圧10mmHg以上の低下
仰臥位から起立した際の心拍数20/分以上の上昇

解答: a

114F60の解説

高齢男性の全身倦怠感と物忘れ。まずは食後の全身倦怠感の理由が問われている。
a 正しい。食後は食物消化のため、腸管への血流が増加する。そのため健常若年者であっても、食後には相対的に脳など身体の他部位からの血流が低下する。高齢者ではさらに血圧調節機構が低下しており、血圧が変動しやすいため、食後の血圧低下をきたしやすい。
b 糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉や高浸透圧高血糖症候群〈HHS〉レベルまで血糖値が上昇しない限り、食後の全身倦怠感は呈さない。
c 運動耐容能の低下を意味するが、食後の全身倦怠感とは関係がない。
d 奇脈と呼ばれる現象であり、心タンポナーデや収縮性心膜炎でみられる。
e 起立性調節障害を想起させる現象。起立時の代償がうまくいかなくなる病態であり、食後の全身倦怠感とは関係がない。

正答率:81%

テーマ:【長文1/3】高齢者の食後倦怠感を説明する症候(食後低血圧)

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