113F71

次の文を読み、71~73の問いに答えよ。

80歳の女性。食欲不振を主訴に来院した。

現病歴:昨日の朝から気分が優れず、冷汗と息苦しさが出現し、食欲も低下した。昨晩も熟睡できなかった。今朝も同様の症状が続いていたが、本人は大丈夫と言う。同居している夫が心配し、本人とともに受診した。

既往歴:変形性膝関節症、高血圧症、2型糖尿病。血糖コントロールは良好であった。

生活歴:夫と2人暮らし。ADLはほぼ自立しているが、歩行時に杖が必要である。喫煙は10年前まで、20本/日を50年間。飲酒は機会飲酒。

家族歴:父は脳卒中で死亡。妹が糖尿病。

現 症:意識は清明。身長155cm、体重44kg。体温36.0℃。脈拍100/分、整。血圧114/60mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の軽度下腿浮腫を認める。両側アキレス腱反射の低下を認める。下肢の振動覚低下なし。

検査所見:尿所見:蛋白2+、糖+。血液所見:赤血球404万、Hb 12.4g/dL、Ht 37%、白血球15,000、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、アルブミン3.6g/dL、AST 71U/L、ALT 21U/L、γ-GTP 24U/L(基準8~50)、LD 419U/L(基準176~353)、CK 450U/L(基準30~140)、CK-MB 42U/L(基準20以下)、血糖234mg/dL、HbA1c 6.2%(基準4.6~6.2)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 0.1mg/dL。12誘導心電図:洞調律でV1-V3誘導でST上昇、II、III、aVF、V5-V6誘導でST低下を認める。画像所見:胸部エックス線写真で心胸郭比56%、肺血管影の増強および両側の肋骨横隔膜角の鈍化を認めない。

最も可能性が高いのはどれか。

肺気腫
急性冠症候群
肺血栓塞栓症
甲状腺機能亢進症
上腸間膜動脈血栓症

解答: b

113F71の解説

食欲不振を主訴に来院した80歳の女性。高血圧症と糖尿病の既往、喫煙歴がある。心筋逸脱酵素の上昇と12誘導心電図でST上昇を認め、急性心筋梗塞の診断となる。
a 喫煙歴があり、鑑別に挙げるべき疾患ではあるが、胸部レントゲンにて気腫状変化が見られないことから否定できる。また、肺気腫のみでは心電図変化はない。
b 正しい。高齢者(特に糖尿病を有する患者)は痛みが明確でないことが多く、本症例のように食欲不振や不定愁訴で来院することも少なくない。何時もこの疾患を忘れてはならない。
c SpO2は正常であり否定できる。
d 甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモンの検査異常が見られる。また、心電図としては洞性頻脈となりやすい。
e 急激な腹痛と下血で発症することが多いため否定的である。

正答率:99%

テーマ:【長文1/3】急性冠症候群〈ACS〉の診断

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