112E50

次の文を読み、50、51の問いに答えよ。

56歳の男性。胸痛のため救急車で搬入された。

現病歴:起床時に胸痛を自覚した。10分経過しても胸痛が改善しないため救急車を要請した。救急隊の到着時、冷汗が著明で、搬送中に悪心を訴えた。建築業で普段から重労働をしているが、今回のような胸痛が起こったことはない。

既往歴:高血圧と高血糖とを職場の健康診断で指摘されていたが、受診はしていない。常用薬はない。アレルギーの既往歴はない。

生活歴:妻と息子との3人暮らし。喫煙は20本/日を36年間。飲酒は週末に焼酎を2合程度。

家族歴:3歳年上の兄が48歳時に心筋梗塞で死亡。

現 症:意識は清明。表情は苦悶様である。身長165cm、体重84kg。体温36.2℃。脈拍120/分、整。血圧160/96mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。肥満のため頸静脈は評価できない。心雑音を聴取しない。呼吸音は両側肺下部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白1+、糖2+。血液所見:赤血球463万、Hb 13.2g/dL、Ht 40%、白血球12,000、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.2g/dL、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.5mg/dL、血糖230mg/dL、Na 130mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。心筋トロポニンT迅速検査陽性。12誘導心電図で洞性頻脈と前胸部の広範なST上昇とを認める。

この患者の胸痛について、診断に有用な情報はどれか。

左乳房付近の痛み
飲水で増悪する痛み
下顎へ放散する痛み
吸気時に増悪する痛み
衣類が触れた際の痛み

解答: c

112E50の解説

胸痛のため救急搬送された56歳男性。高血圧、糖尿病、喫煙や若年発症の家族歴といった冠危険因子のオンパレードである。心電図にて広範なST上昇を認め、急性心筋梗塞〈AMI〉の診断となる。
a 左乳房、というようなpin pointの痛みはむしろAMIを否定する材料である。
b 飲水で増悪する痛みは扁桃炎など咽頭、喉頭のトラブルを疑う。
c 正しい。放散痛や絞扼感がAMIに特徴的な痛みである。
d 吸気時に増悪する痛みは胸膜炎を疑う所見である。
e 衣類が触れた時の痛みは帯状疱疹のような体表面のトラブルを疑う。

正答率:96%

テーマ:【長文1/2】急性冠症候群〈ACS〉の胸痛の特徴

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