112E48

次の文を読み、48、49の問いに答えよ。

74歳の男性。全身倦怠感と食欲低下の精査で指摘された胃癌の手術のため入院した。

現病歴:2か月前から全身倦怠感を自覚していた。1か月半前から食欲低下があり、3週間前から腹部膨満感が出現したため、かかりつけ医から紹介されて受診した。上部内視鏡検査で幽門部に腫瘍病変と幽門狭窄とを指摘され、胃癌の確定診断を得たために手術を目的に入院した。昨夜嘔吐した後から咳嗽が続いている。

既往歴:60歳時に職場の健康診断で耐糖能異常を指摘され、スルホニル尿素薬で内服治療中である。

生活歴:喫煙は15本/日を50年間。飲酒は週2回程度。

家族歴:父親が肺癌のため70歳で死亡。

現 症:身長170cm、体重83kg。体温37.8℃。脈拍80/分、整。血圧140/76mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様であり、眼球結膜に黄染を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は右胸背部にrhonchiを聴取する。上腹部は膨隆しているが、軟で、波動を認めない。圧痛と筋性防御とを認めない。四肢の運動麻痺は認めない。

検査所見:血液所見:赤血球334万、Hb 9.2g/dL、Ht 29%、白血球10,500 (桿状核好中球10%、分葉核好中球64%、好酸球2%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球20%)、血小板26万。血液生化学所見:総蛋白6.2 g/dL、アルブミン2.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 25U/L、LD 145U/L(基準176〜353)、ALP 206U/L(基準115〜359)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL。血糖128mg/dL、HbA1c 7.9%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール156mg/dL、トリグリセリド196mg/dL、Na 133mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 96mEq/L。CRP 3.4mg/dL。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。

手術は患者の状態が安定するまで延期することにした。

この患者に安全に手術を行うために、入院後手術までの間に行うべきなのはどれか。

輸血
胃瘻の造設
経口補液の投与
抗菌薬の経静脈投与
スルホニル尿素薬の増量

解答: d

112E48の解説

胃癌手術前に発熱、炎症反応の上昇、エックス線にて浸潤影を認めることから肺炎を呈していると考える。嘔吐を契機としているため、誤嚥性肺炎が考えやすい。
a 胃癌であれば多少の貧血は認めるものである。Hb値も9.2g/dLであり、輸血の適応ではない。急性発症か慢性発症かにもよるが、一般的には6.0g/dL以下を輸血の1つの目安とする。
b 長期的な栄養投与経路として考慮される。が、今後胃摘出が予定されており、不適切。
c 誤嚥性肺炎が疑われ、経口補液は控えたい。静脈路確保による輸液であれば考慮される。
d 正しい。上記の通り肺炎を疑うため、抗菌薬の投与を開始する。
e スルホニル尿素薬は内服薬である。現在、経口摂取が困難と考えられ、血糖コントロールが必要と判断されればインスリンにて行うべきである。

正答率:91%

テーマ:【長文1/2】誤嚥性肺炎の患者の入院後手術までの間に行うべきこと

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