110F16

76歳の男性。背部痛と右上下肢の脱力とを主訴に来院した。今朝、午前7時ころ突然の背部から左頸部へ移動する痛みを自覚した。その後、徐々に疼痛が緩和してきたため、消炎鎮痛薬の貼付剤で様子をみていた。10分程して右上肢の脱力も出現した。ソファで休もうとしたところ、右下肢にも脱力があることに気付いた。横になって約30分でいずれの症状も改善したが、心配した家族とともに午前10時に受診した。高血圧症と糖尿病で内服治療中である。意識は清明。身長172cm、体重68kg。体温36.5℃。脈拍88/分、整。右上肢血圧136/70mmHg、左上肢血圧110/62mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。神経学的所見に異常を認めない。
最も考えられるのはどれか。
低血糖
低血圧
心房細動
大動脈解離
頸動脈硬化症

解答: d

110F16の解説

「突然の移動する背部痛」より大動脈解離を考える。右上下肢の脱力がみられているのは左の総頸動脈への血流が低下したことにより、左脳の虚血が生じたためであろう。
a 低血糖で中枢神経障害がみられる可能性もあるが、片側性には出現しない。
b 血圧は記載が本文中にあり、十分に保たれている。
c 心房細動〈AF〉による血栓で片側性の脱力をみることはあるが、この患者では脈拍が整であり、考えにくい。
d 正しい。上記の通り。
e 頸動脈硬化症では突然の移動する背部痛をみない。

正答率:93%

テーマ:大動脈解離の診断

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