109A40

58歳の男性。全身倦怠感と息切れとを主訴に来院した。1か月前から休息しても改善されない全身倦怠感と息切れとが出現し、次第に増強していた。10年前から糖尿病と高血圧症とを指摘され治療を受けていたが、仕事が多忙なため半年間受診しておらず、薬を服用していなかった。身長170cm、体重75kg(2か月前は71kg)。脈拍88/分、整。血圧168/102mmHg。顔面と下腿とに浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、糖2+、潜血(±)。血液所見:赤血球320万、Hb 8.2g/dL、Ht 25%、白血球8,200、血小板12万。血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL、アルブミン2.8g/dL、尿素窒素32mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、尿酸7.8mg/dL、血糖220mg/dL、HbA1c 7.8%(基準4.6〜6.2)、Na 132mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 98mEq/L、Ca 7.2mg/dL、P 5.8mg/dL。CRP 0.3mg/dL。胸部エックス線写真で肺うっ血と心拡大とを認める。ループ利尿薬を静脈内投与し浮腫の改善を認めた。
腎不全の進行防止のため次に行う治療として最も適切なのはどれか。
血液吸着
赤血球輸血
降圧薬の投与
生理食塩液の点滴
アルブミン製剤の投与

解答: c

109A40の解説

糖尿病のコントロールが悪く、尿蛋白3+、血清アルブミン2.8g/dLとネフローゼ症候群の定義を満たす。胸部エックス線で肺うっ血と心拡大がみられており、糖尿病性腎症により、除水できずうっ血が生じた状態と考えられる。
a 急性間質性肺炎やエンドトキシン血症に対して行われる。
b Hbが8.2g/dLと低下しているも、これは腎性貧血によるものであり、緊急な輸血は不要。エリスロポエチン補充が有効。
c 正しい。血圧168/102mmHgとII度高血圧がみられる。腎保護の観点からもアンジオテンシン変換酵素阻害薬〈ACEI〉やアンジオテンシン受容体拮抗薬〈ARB〉を用いる。
d 上述のようにうっ血があるため、輸液は控えたい。
e 確かにアルブミンの低下はあるのだが、補充の効果は一過性に過ぎず、設問の要求である「腎不全の進行防止」には結びつかない。

正答率:91%

テーマ:糖尿病性腎症の治療

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