107A38

70歳の男性。息切れを主訴に来院した。5年前に胃癌のため胃全摘術を受けた。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。胸骨左縁で収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部の正中部に手術痕を認める。肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球185万、Hb 8.3g/dL、Ht 25%、網赤血球0.3%、白血球3,900、血小板8.1万。血液生化学所見:尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、総ビリルビン2.1mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 1,280U/L(基準176~353)、Fe 65μg/dL(基準59~161)、ビタミンB12 112pg/mL(基準250~950)、葉酸8.3ng/mL(基準2.4~9.8)。末梢血塗抹標本で核に過分葉のある成熟好中球を認め、骨髄血塗抹標本で巨赤芽球を認める。ビタミンB12の筋肉内投与が行われ、貧血は改善しつつあったが、治療中に改善がみられなくなった。
現時点で患者に不足していると考えられるのはどれか。
亜鉛
ビタミンC
ビタミンB6
エリスロポエチン

解答: a

107A38の解説

胃全摘術後には1~2年で鉄が、5~10年でビタミンB12が欠乏しやすくなる。本症例ではFeが基準値内にあるため鉄欠乏性貧血は否定的。過分葉好中球や巨赤芽球がみられていることから、胃全摘後5年が経過していることと合わせ、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の診断となる。ただし、本問のポイントはここからである。診断後、ビタミンB12を筋肉内投与したにもかかわらず、貧血の改善がみられなくなったというのだ。ポイントはもともとの鉄の値であろう。65μg/dlと基準値下限ギリギリにあった。ビタミンB12投与により造血が再開されたため、今度は鉄が欠乏した、というエピソードが考えやすい。
a 正しい。上記の通り。
b 亜鉛欠乏でも貧血をみるが、胃全摘などの病歴とかみあわない。
c ビタミンC欠乏で壊血病をみるが、その場合は紫斑など出血傾向をみる。
d ビタミンB6欠乏で貧血はみない。
e エリスロポエチンが低下し、腎性貧血をみるのは腎機能低下時である。

正答率:87%

テーマ:巨赤芽球性貧血の治療中に見られた鉄欠乏性貧血

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし