106D21

66歳の男性。体重増加と著明な浮腫とを主訴に来院した。4か月前に足部の浮腫を自覚した。次第に靴が履きにくくなり、体重が7kg増加した。息子と娘がいるが、生来健康である。身長165cm、体重70kg。脈拍76/分、整。血圧142/86mmHg。呼吸数16/分。両側の下腿と大腿とに浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血(±)、沈渣に赤血球1~4/1視野、白血球0~1/1視野。血液生化学所見:空腹時血糖80mg/dL、総蛋白4.0g/dL、アルブミン2.0g/dL、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、LDLコレステロール200mg/dL(基準65~139)。胸部エックス線写真で両側に胸水を認める。腎生検のPAM染色標本(A)と電子顕微鏡写真(B)とを別に示す。
この患者に説明すべきこととして適切なのはどれか。
肉眼的血尿を生じる。
子どもに同じ病気が発症する。
悪性腫瘍が出現する可能性がある。
数年後に透析を導入する必要がある。
くも膜下出血を発症する可能性がある。

解答: c

106D21の解説

高齢男性の急激な体重増加と浮腫である。蛋白3+、アルブミン2.0g/dlとネフローゼ症候群の診断基準を満たしており、総蛋白やLDLコレステロールも高値である。胸部エックス線写真で両側に胸水を認める。Aでは基底膜の肥厚やスパイク形成が、Bでは糸球体基底膜内に高電子密度沈着物をそれぞれ認めるため、膜性腎症と診断できる。
a 膜性腎症では潜血をみることはあっても、肉眼的血尿を生じることはまれである。
b 遺伝性はない。Alport症候群などの遺伝性腎症は若年で診断されることが多い。
c 正しい。大腸癌などの悪性腫瘍と関連が深い。
d 本患者はクレアチニン 1.0mg/dl と腎障害を認めていない。膜性腎症は緩徐に進行する病態であるため、数年以内に透析導入となる可能性は低いだろう。
e くも膜下出血を合併しやすい腎疾患といえば多発性嚢胞腎であるが、臨床像が異なる。

正答率:88%

テーマ:膜性腎症〈MN〉の患者に説明すべきこと

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