103B56

次の文を読み、56~58の問いに答えよ。
75歳の女性。歩行障害と発語の減少とを主訴に来院した。
現病歴:本日家の前の道でつまずいて転倒した。道端でうずくまっているところを隣人に発見され、孫に伴われて受診した。孫は「脈が遅くなる心臓の病気があった。2か月前に車と接触して転倒し、肩と頭部を打撲した。2週前から目立って言葉が少なくなり、時々つまずくようになった」と話した。
既往歴:詳細不明。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識レベルはJCS I-2。自発性は低下し自発語が少ない。身長156cm、体重62kg。体温36.2℃。呼吸数16/分。脈拍60/分、整。血圧114/68mmHg。皮膚は乾燥している。顔面と下腿とに浮腫を認めない。瞳孔は正円同大で対光反射は迅速に認められる。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。3/6度の収縮期雑音を心尖部に認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛や抵抗を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球394万、Hb 12.3g/dL、Ht 33%、白血球8,100、血小板35万。血液生化学所見:血糖86mg/dL、総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素13mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、総コレステロール176mg/dL、AST 34U/L、ALT 18U/L、LD 181U/L(基準176~353)、ALP 256U/L(基準115~359)、Na 136mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 100mEq/L。CRP 1.4mg/dL。心電図(A)と胸部エックス線写真(B)とを別に示す。
症状と関連がある部位はどれか。
心臓
腎臓
筋肉
末梢神経

解答: a

103B56の解説

高齢女性の歩行障害と発語減少。2か月前に交通外傷にて頭部を打撲した既往があり、それを契機に症状が発来しているように伺える。慢性硬膜下血腫は念頭におきたいところだ。「脈が遅くなる心臓の病気」は徐脈性疾患であろう。Aにてペースメーカー電位が、Bにてペースメーカー本体が描出されていることからも納得がいく。
a 正しい。慢性硬膜下血腫を疑う。
b ペースメーカー植え込み術の既往はありそうだが、エックス線にて心拡大があるわけでもなく、現在の心機能は保たれているようだ。
c クレアチニン上昇があるも、これはおそらく脱水による腎前性腎不全によると思われる。
d・e 筋力低下や末梢神経障害による歩行障害であるならば、発語の減少が説明つかない。
※「心尖部に認める収縮期雑音」は悩ましいが、心雑音が出現するほどの貧血とは思えない。僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉のような弁膜症があるのだろうか(そう考えても本問は「症状と」と設問文に明記があるため正答は変わらない)。

正答率:84%

テーマ:【長文1/3】慢性硬膜下血腫の診断

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし