102H35

次の文を読み、35、36の問いに答えよ。
40歳の男性。左下肢の痛みを主訴に来院した。
現病歴:4週前から左腰の痛みが出現した。他院で腰痛症の診断で非ステロイド性抗炎症薬の投与を受け、週1回通院していたが症状は改善せず、左下腿外側の痛みと左足背のしびれとを自覚するようになった。患者自身としては以前経験した腰痛とは違うように思っていたが、腰痛症と診断した医師とは長い付き合いで、そのことを言い出せず、改善のないまま4週間服薬を続けた。しかし、全く改善がみられないため、紹介状を持たずに当院を受診した。
既往歴:30歳から時々腰痛を自覚。
生活歴・家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長170cm、体重65kg。体温36.2℃。脈拍72/分、整。血圧124/66mmHg。左右膝蓋腱反射とアキレス腱反射とは正常で、病的反射はみられない。徒手筋力テストでは左母趾の背屈力が4と低下している。
下線部のような状況を避けるために有用な会話はどれか。
「階段の昇降はできますか」
「痛みで夜中に目が覚めますか」
「尿の出が悪いことはありますか」
「痛みについて何か心配なことはありますか」
「痛みが続いているのですか。困りましたね」

解答: d

102H35の解説

患者は普段とは異なる痛みに不安感を抱いているが、長い付き合いの医師に対する遠慮からそれを言い出せずにいる状態である。このような場合はオープンクエスチョンで何が一番気になっているのかを聞き出すのがよいだろう。患者は、医療者が思いもよらないことを不安に思っていたり理解できていなかったりする。また、こちらが良かれと思って行っていることで不信感や疑問を抱かせてしまうことがある。そのようなことを避けるために、今何を思っているのか、常に本人自身の言葉で口に出してもらうことは非常に重要であるといえる。
a・b・c いずれも病状を聞き出すのには重要な質問であり、結果的に正しい診断にいたることができるかもしれない。しかしそれだけでは患者の不安を取り除くことはできないだろう。
d 正しい。身体の不調があり痛み止めをもらって1か月治療したのにもかかわらず改善がなく、「一生このままだったらどうしよう」「良い薬はないのか」「もう治らないのでは?」「しびれが広がってきたらどうしよう」「重い病気だったら?」など様々な疑問が湧いてきていると考えられる。この言い方ならば、何が今一番心配なのかを聞き出すことができるだろう。
e 共感であり、悪くない選択肢であるが、「言い出せない」状況を打破することはできないだろう。

正答率:95%

テーマ:【長文1/2】"馴れ合い"で本心を打ち明けられない状態にならないために有用な医師の発言

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