101A34

32歳の男性。頸部と鼠径部との腫瘤を主訴に来院した。1か月前に歩行中、右鼠径部の違和感を覚え腫瘤に気付いたが痛みはなかった。その後、髭を剃っている時に偶然右頸部の腫れに気付いた。喫煙30本/日を12年間。体温37.6℃。脈拍76/分、整。血圧122/76mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。体表リンパ節は表面平滑、弾性硬で、右頸部に径2cmを3個、右鎖骨上窩に径3cmを1個、左頸部に径1.5cmを2個、右腋窩に径1.5cmを2個、右鼠径部に径2.5cmを1個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。左肋骨弓下に脾を3cm触知し、臍下正中部に径5cmの腫瘤を触知する。血液所見:赤血球460万、Hb 14.2g/dL、Ht 42%、白血球6,700、血小板18万。血清生化学所見:総蛋白6.3g/dL。アルブミン4.2g/dL、尿素窒素20mg/dL。クレアチニン1.3mg/dL。総コレステロール156mg/dL。総ビリルビン1.0mg/dL、AST 42U/L、ALT 30U/L、LD 875U/L(基準176~353)。免疫学所見:CRP 4.2mg/dL、可溶性IL-2受容体2,300U/mL(基準550以下)。右頸部リンパ節生検H-E染色標本を別に示す。
治療開始後に注意すべきことはどれか。2つ選べ
高尿酸血症
高乳酸血症
高カルシウム血症
低リン血症
低ナトリウム血症

解答: a,b

101A34の解説

32歳男性の頸部と鼠径部腫瘤。可溶性IL-2受容体高値であることから悪性リンパ腫を考える。画像より、濾胞性リンパ腫が考えやすい。「治療開始後」とは化学療法を開始した後、ということである。腫瘍崩壊症候群〈TLS〉を考えたい。
a 正しい。細胞から尿酸が漏出する。
b 正しい。原因は詳しく分かっていないが、乳酸アシドーシスを呈することが多い。臨床上は化学療法開始後の乳酸アシドーシスでTLSを想起できるようにしておきたい。
c・d 細胞崩壊による高リン血症のため、低カルシウム血症をみる(正常人ではリン×カルシウムの積が一定となる)。
e ナトリウム血症は脱水により上昇するかもしれないし、副作用により低下するかもしれない。また変動しないかもしれない。何とも言い切れないため、選択肢として切りきれない。が、a・bが明らかに正しいためeを積極的に選ぼうとは思わない。
100A35の類題。

正答率:59%

テーマ:腫瘍崩壊症候群で注意すべき検査値

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