111I79

43歳の女性。意識障害を主訴に救急車で搬入された。一昨日の午後から上腹部痛、背部痛および悪心が出現し、自宅近くの医療機関を受診し鎮痛薬と制吐薬とを処方されたが無効だった。本日早朝から呼びかけに返答できなくなり夫が救急車を要請した。既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。喫煙歴と飲酒歴はない。意識は傾眠状態だが唸り声をあげながらうずくまってしまい仰臥位で診察を受けられない。身長162cm、体重60kg。体温37.2℃。心拍数56/分、整。血圧106/58mmHg。呼吸数20/分、深い大きな呼吸で呼気には異臭がする。臍周囲に青紫色の着色斑を認める。尿所見:蛋白(−)、糖4+、ケトン体3+。血液所見:赤血球468万、Hb 14.8g/dL、白血球18,000、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.2g/dL、アミラーゼ820U/L(基準37〜160)、クレアチニン1.3mg/dL、血糖1,080mg/dL、HbA1c 5.6%(基準4.6〜6.2)、ケトン体8,540μmol/L(基準28〜120)、総コレステロール310mg/dL、トリグリセリド840mg/dL、Na 143mEq/L、K 4.9mEq/L、Cl 93mEq/L、Ca 6.8mg/dL。CRP 24mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.11、PaCO2 27Torr、PaO2 86Torr、HCO3- 15.2mEq/L。胸部エックス線写真で両側に軽度の胸水を認める。頭部CTで異常を認めない。腹部造影CTを別に示す。

静脈路を確保し生理食塩液とともに投与を開始すべきなのはどれか。3つ選べ。

速効型インスリン
副腎皮質ステロイド
蛋白分解酵素阻害薬
グルコン酸カルシウム
広域スペクトル抗菌薬

解答: a,c,e

111I79の解説

意識障害で搬入された43歳の女性。上腹部痛と背部痛があり、うずくまった姿勢を好むことから、膵にフォーカスを当てる。アミラーゼが上昇しており、代謝性アシドーシスをみている。画像では膵の腫大と周囲への炎症波及がみられ、急性膵炎の診断。臍周囲の着色斑はCullen徴候。ケトン体が尿中・血中で高値を呈し、高血糖がみられているのは糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉を合併しているためである。
※急性膵炎の治療については近年考え方が大きく変わっている(こちらのトピック参照)。111回と昔の問題であるため、現代では参考程度にとらえてほしい。
a 正しい。DKAに対して生理食塩水の輸液と速効型インスリンの投与が有効。
b 急性膵炎に対して副腎皮質ステロイドの有効性はない。
c 当時の正解だが現代では△。急性膵炎に対して蛋白分解酵素阻害薬が有効とされてきたが、現代では「推奨なし」となっている。
d 高カリウム血症や低カルシウム血症に有効。今、血中カリウムが軽度上昇しているも、致死的不整脈を呈するほど高値とは思えない。また、血中カルシウムもアルブミン補正後は7.6mg/dLであり、急速に補正する必要性は低い。
e 当時の正解だが現代では△。予防的抗菌薬投与は現代では行われない。

正答率:44%

テーマ:急性膵炎で生理食塩水とともに投与すべきもの

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