111H33

次の文を読み、33、34の問いに答えよ。

55歳の男性。息切れと下腿の浮腫とを主訴に来院した。

現病歴:約6か月前から全身倦怠感を自覚していたが他に症状がないので様子をみていた。1か月前から下腿の浮腫を自覚し、次第に労作時の息切れを感じることが多くなったため受診した。

既往歴:30歳時に虫垂炎手術。

家族歴:父親が80歳時に脳梗塞、母親が82歳時に膵癌で死亡。

生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

現 症:意識は清明。身長161cm、体重60kg。体温36.2℃。脈拍96/分、整。血圧110/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 90%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認める。心音はIII音とIV音とを聴取する。呼吸音は両側下胸部で減弱している。腹部は平坦、軟で、右季肋部に肝を2cm触知する。両下腿に圧痕を伴う浮腫を認める。

検査所見:尿所見:蛋白3+、糖(−)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球417万、Hb 13.0g/dL、Ht 41%、白血球6,800、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白9.8g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン0.7mg/dL、AST 34U/L、ALT 26U/L、LD 345U/L(基準176〜353)、ALP 225U/L(基準115〜359)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン2.3mg/dL、血糖79mg/dL、HbA1c 5.3%(基準4.6〜6.2)、Na 138mEq/L、K 4.9mEq/L、Cl 106mEq/L、Ca 10.8mg/dL、P 2.1mg/dL、脳性ナトリウム利尿ぺプチド〈BNP〉253pg/mL(基準18.4以下)。CRP 0.1mg/dL。心電図は心拍数91/分の洞調律で肢誘導の低電位、左房負荷および不完全左脚ブロックを認める。胸部エックス線写真で心胸郭比は52%で、両側に少量の胸水を認める。心エコー図(A、B)を別に示す。

この患者の心エコーで認められる所見はどれか。

右室の虚脱
左室内腔の拡大
左室駆出率の低下
心室中隔の菲薄化
左室壁の著明な肥厚

解答: e

111H33の解説

中年男性の息切れと下腿浮腫。頸静脈の怒張やIII, IV音を聴取していることから急性心不全と考える。A(長軸像;周囲の点1マスが1cm)にて拡張期の左室壁厚が2cm程度あり(正常は1cm前後)、明らかに肥厚している。また、左室壁には顆粒状の心筋輝度上昇を認めている。少量の心膜液の貯留も認める。B(短軸像)では全周性に左室壁肥厚がみられる。また、心膜液、胸水貯留を認めている。心電図にて四肢低電位・不完全左脚ブロックを呈していること、腎機能低下を認めること、からアミロイドーシスと考える(次問で実際の診断が示されている)。
a 右室に虚脱はみられない。
b・d 左室は全周性に肥厚しており、中心性に肥大しているのでむしろ内腔の狭小化を認める。
c 周囲の点を参照すると、Aにおいて拡張期の左室径は約4cm、収縮期の左室径は約2cm程度であることから、収縮は保たれていると考えられる。
  ※厳密には左室駆出分画〈EF〉≧55%であることを示せるとよいが、与えられた画像だけからは算出できない。
e 正しい。上記の通り。

正答率:92%

テーマ:【長文1/2】心アミロイドーシスにおける心エコーの所見

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