111A31

82歳の女性。腹痛と血便とを主訴に来院した。以前から時々便秘になること以外に自覚症状はなかったが、昨夜突然、左下腹部痛が出現し、直後に排便したところ血便であった。腹痛は、排便後一時的に軽減したが今朝から増強し、悪心を伴うようになった。その後も血便が続いたため受診した。10年前から自宅近くの診療所で高血圧症に対する治療を受けている。意識は清明。身長153cm、体重54kg。体温37.2℃。脈拍88/分、整。血圧120/84mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98%(room air)。腹部は平坦で、左下腹部に圧痛を認めるが、Blumberg徴候と筋性防御とを認めない。腸雑音は低下し、金属音を聴取しない。血液所見:赤血球350万、Hb 11.0g/dL、Ht 43%、白血球9,200、血小板38万。血液生化学所見:尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL。CRP 5.0mg/dL。立位と臥位の腹部エックス線写真(A、B)を別に示す。

入院後の対応として適切なのはどれか。

イレウス管による減圧術
開腹手術
カテーテル塞栓術
大腸内視鏡による減圧術
保存的治療

解答: e

111A31の解説

高血圧の既往があり、急性発症の左下腹部痛及び鮮血便から虚血性大腸炎を疑う。腹部エックス線A, Bでは左側腹部の腸管ガス像を認めず、この部位での狭窄があると考えられる。
a 立位腹部エックス線で明らかなニボー〈niveau〉を認めず、腸閉塞は否定的である。
b 手術適応はない。
c 本疾患は粘膜下の細血管が破綻する病態であるため、出血量はそれほど多くはならない。また、Hb値も10g/dLを保っている。ゆえにカテーテル塞栓術は適応とならない。
d 腸管の捻転や腫瘍の存在による閉塞のケースでは減圧も考慮されるが、本疾患の主病態は虚血であるため、無効。
e 正しい。絶食管理による保存的加療が適切である。
106A30のプール問題。

正答率:77%

テーマ:虚血性大腸炎の入院後の治療

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