108G55

78歳の男性。3週前からの頭重感を主訴に来院した。生活は自立している。最近5年は健康診断を受けていない。既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は日本酒1合/日を55年間。身長165cm、体重60kg。脈拍72/分、整。血圧184/112mmHg、左右差なし。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部と背部とに血管雑音を聴取しない。下腿に浮腫を認めない。尿所見と血液生化学所見とに異常を認めない。心電図で左室肥大所見を認める。胸部エックス線写真で心胸郭比は62%である。
正しいのはどれか。
降圧薬は低用量から開始する。
降圧薬は短時間作用型を選択する。
3か月間は減塩などの食事制限のみを行う。
サイアザイド系利尿薬は第一選択とはしない。
降圧目標は診察室血圧で120/80mmHg未満とする。

解答: a

108G55の解説

血圧が184/112mmHgと高く、III度高血圧の様相を呈している。頭重感はおそらくこのためであろう。後負荷が高いため、左室肥大と心胸郭比の増大(>50%)がみられている。原則として初診での投薬は避けたいところであるが、すでに高血圧による全身症状が出現しているうえ、最近5年は健康診断を受けておらずコンプライアンスが悪そうなため、降圧薬の投与も考慮されうる状況といえる。
a 正しい。いきなり高用量の処方をする医師はいまい。低用量から徐々に開始すべき。
b 長時間作用型を選択し、1日を通して血圧をコントロールすべき。
c 食事制限も必要であるが、現段階ではそれのみで病態が改善する見込みは薄い。
d アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬〈ARB〉・Ca拮抗薬と合わせてサイアザイド系利尿薬も第一選択となる。
e 後期高齢者(75歳以上)の降圧目標は診察室血圧で140/90mmHg(忍容性があれば130/80mmHg)未満である(高血圧治療ガイドライン2019)。

正答率:81%

テーマ:III度高血圧の高齢者への対応

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