108C21

76歳の女性。一過性の右不全片麻痺と構音障害を主訴に来院した。15年前から高血圧症で通院中である。2年前の心電図検査では異常がなかった。数日前から動悸を自覚していたが、症状が軽かったため様子をみていた。今朝、朝食中に右上下肢の脱力感と構音障害とが出現した。症状は30分程度で消失したが、心配した家族に付き添われて受診した。来院時、意識は清明。脈拍92/分、不整。血圧124/74mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。頸部血管雑音を認めない。過剰心音と心雑音とを認めない。呼吸音に異常を認めない。神経学的診察で異常を認めない。頭部CTでは明らかな異常を認めない。来院時に記録した12誘導心電図を別に示す。
この患者に対する説明として適切なのはどれか。
「高血圧の薬を変更します」
「今日の心電図は2年前と変わりはないようです」
「いつもの薬をしっかり内服していれば大丈夫です」
「高齢者ではよくあることですので様子をみてください」
「血液を固まりにくくする薬で治療する必要があります」

解答: e

108C21の解説

「一過性の右不全片麻痺と構音障害」という記載からは脳虚血を疑う。与えられた心電図にて心房細動〈AF〉がみられることから、AFにより心内に形成された微小血栓が脳に飛び、一過性に脳虚血を惹起したものと考えたい。大きな血栓が飛んでいたら一過性では済まないことから、早急な対策が望まれる。
AFに対する抗凝固療法の適応を決めるスコアリングであるCHADS2スコアにて4点と算出されるため、ワルファリン等の投与が強く推奨される状況である。
a 高血圧の薬の影響ではない。
b AFという異常が出現しているため、変わりないとは言えない。
c・d 心原性脳塞栓発症のリスクが高く、大丈夫とは言えない。また、経過観察も不可。
e 正しい。上記の通り。

正答率:97%

テーマ:心房細動〈AF〉患者に対する説明

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