107H31

次の文を読み、156、157の問いに答えよ。
82歳の女性。意味不明な言動を心配した家族に伴われて来院した。
現病歴:1週前までは特に変わった様子はなかった。数日前から食欲が低下し、昨日の朝からつじつまの合わない言動がみられるようになった。今朝はパジャマのまま外出してしまい、連れ戻そうとすると大声で騒ぐため、心配した家族に連れられて受診した。
既往歴:60歳時に甲状腺癌で甲状腺・副甲状腺全摘術を受けた。術後から甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD及びカルシウム剤を服用している。65歳時から高血圧症で服薬加療中。最近は腎機能障害と高血糖とを指摘されている。
生活歴:娘の家族と同居。
家族歴:母親が脳卒中のため75歳で死亡。
現 症:体温36.0℃。脈拍64/分、整。血圧152/74mmHg。呼吸数16/分。舌と皮膚とは乾燥している。開眼しているが、質問に対して返答せず、意味不明の発言を繰り返す。
検査所見:血液所見:赤血球367万、Hb 10.5g/dL、Ht 33%、白血球4,200、血小板22万。血液生化学所見:随時血糖167mg/dL、HbA1c 6.0%(基準4.6~6.2)、総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.3g/dL、総コレステロール212mg/dL、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン1.7mg/dL、尿酸8.0mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 100mEq/L、Ca 13.0mg/dL。CRP 0.5mg/dL。
この精神障害の原因として最も考えられるのはどれか。
貧血
高血糖
高尿酸血症
高カルシウム血症
低アルブミン血症

解答: d

107H31の解説

高齢女性の意味不明な言動。60歳時に副甲状腺全摘を受けており、その補正のために活性型ビタミンDとカルシウム剤を服用していた。が、最近になって腎機能障害が出現してきたため、体内のカルシウム蓄積が亢進してしまったのであろう。Ca 13.0mg/dl(アルブミン補正後、13.7mg/dl)と高度上昇をみている。これによる意識障害が考えやすい。
a Hbは10.5g/dlであり、著明な貧血はない。そもそも、貧血単独で意味不明な言動はみられない。
b 随時血糖は167mg/dlであり、血漿浸透圧は2×142+167/18+40/2.8≒308mOsm/kgH2O である。軽度上昇はあるも、意識障害がみられるほどではない。
c 尿酸値は8.0mg/dlであり、著明な上昇はない。そもそも、高尿酸血症単独で意味不明な言動はみられない。
d 正しい。上記の通り。
e アルブミンは3.3g/dlであり、著明な低下はない。そもそも、低アルブミン血症単独で意味不明な言動はみられない。

正答率:97%

テーマ:【長文1/2】ビタミンD中毒による高カルシウム性精神障害の診断

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