100F37

56歳の男性。全身の痒みを主訴に来院した。家族歴と既往歴とに特記すべきことはない。5年前から禁煙している。1年前から赤ら顔で、定期健康診断の血液検査で異常を指摘されたが放置していた。最近、頭重感と耳鳴りとを自覚するようになった。呼吸数20/分。脈拍84/分、整。血圧146/94mmHg。顔色は暗赤紫色調で口唇にチアノーゼを認める。皮膚には掻爬痕があり、四肢静脈は怒張している。頸部リンパ節腫大はない。胸部には異常なく、腹部で左肋骨弓下に脾を触知する。血液所見:赤血球720万、Hb 20.2g/dL、Ht 56%、白血球11,200(好中球75%、好酸球3%、好塩基球5%、単球3%、リンパ球14%)、血小板54万、総鉄結合能〈TIBC〉376μg/dL(基準290~390)。血清生化学所見:総蛋白7.1g/dL、アルブミン4.3g/dL、フェリチン18ng/mL(基準20~120)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸7.8mg/dL、AST 37U/L、ALT 32U/L、LD 430U/L(基準176~353)、Fe 25μg/dL。CRP 0.2mg/dL。
低下しているのはどれか。2つ選べ
循環赤血球量
平均赤血球容積〈MCV〉
動脈血酸素飽和度
血中エリスロポエチン濃度
好中球アルカリホスファターゼ指数

解答: b,d

100F37の解説

中年男性の全身の痒みと赤ら顔。汎血球増加がみられ、真性赤血球増加症〈PV〉と考えられる。痒みがみられているのは増加した好塩基球等によるヒスタミンなどケミカルメディエーター遊離のため。頭重感と耳鳴りは粘稠度亢進による脳血管停滞のため。四肢静脈怒張も粘稠度亢進による静脈血鬱滞のため。造血により鉄が消耗され、フェリチンとセットで低下している。いろいろ考えさせる良問だ。
a 循環赤血球量は増加する。
b 正しい。上記のように鉄欠乏性貧血を呈するため、小球性となる。それゆえ平均赤血球容積〈MCV〉は低下。
c 動脈血酸素飽和度が低下するのは二次性赤血球増加症にて。わざわざ5年前から禁煙しているとの記載があり、否定してほしい出題者の意図がミエミエだ。むろん二次性赤血球増加症では汎血球増加をみないため、そこからも否定できる。
d 正しい。多血のfeedbackにより血中エリスロポエチン濃度は低下する。
e 好中球アルカリホスファターゼ指数〈NAP score〉は増加する。NAP scoreが低下する病態としては発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉と慢性骨髄性白血病〈CML〉、骨髄異形成症候群〈MDS〉を押さえておこう。

正答率:56%

テーマ:真性赤血球増加症〈PV〉(真性多血症)の検査所見

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