117C54

28歳の経産婦(3妊2産)。妊娠41週0日、分娩予定日超過のため管理目的に入院した。推定胎児体重は3,100g。妊娠41週1日、午前9時からオキシトシンで陣痛誘発を開始した。午後6時に一過性の胎児徐脈が出現した。胎児心拍数陣痛図を別に示す。内診で子宮口は7cm開大、展退度は90%、硬度は軟、児頭下降度はSP-1cm、胎胞を触知した。
まず行うべき対応はどれか。
吸引分娩
人工破膜
体位変換
帝王切開
子宮収縮抑制薬投与

解答: c

117C54の解説

【プロセス】
①28歳の経産婦(3妊2産)・妊娠41週0日
②分娩予定日超過のため管理目的に入院
③午前9時からオキシトシンで陣痛誘発を開始
④午後6時に一過性の胎児徐脈が出現
⑤胎児心拍数陣痛図では子宮収縮に伴って胎児の徐脈
⑥子宮口は全開大していない・SP−1cm・胎胞を触知(未破水ということ)
☞⑤の画像は早発一過性徐脈か、変動一過性徐脈か、遅発一過性徐脈か。この3択で悩むと沼である。正解は「体位変換」であり、かつ徐脈の程度や持続時間が各回ごとに異なるため、出題者は変動一過性徐脈を意図した可能性が高いが、試験本番で自信をもって画像を読めた者は少ないだろう。「鏡像関係だし、私は早発一過性徐脈と思いました」「子宮収縮の後に毎回徐脈が出ているので遅発一過性徐脈と考えたのですが何が違うのでしょうか?」といった疑問を持ったそこのあなた! 心配しなくてよい。あなたがmajorityだ。正答率34%がその事実を物語っている。徐脈を命名しなくてはならない、という呪縛から一度離れ、本文と選択肢を客観的に眺めてみてはいかがだろう?

【選択肢考察】
a ⑥は吸引分娩の要件を満たさない。
b 徐脈が発生している状況下で人工破膜により強引に羊水を流出させ、分娩を進行させるのは危険である。なお人工破膜の合併症として臍帯脱出が知られており、臍帯圧迫が疑われる本症例では病態の悪化の可能性すらある。
c 正しい。変動一過性徐脈は臍帯圧迫を示唆する。体位変換によりこの圧迫が解除されることがあり、設問の要求通り「まず」試みる手段として最適である。変動一過性徐脈と読めなかったとしても、消去法で本選択肢を残すことは十分に可能だろう。
d この選択肢を選んでしまった者に問いたい。諸君の頭の中には「遅発一過性徐脈がみられたら緊急帝王切開!」のような "公式" が出来上がってしまってはいないか? なんだかよく分からない、難しそうな問題。深くまで思考することを回避した結果、偶然にも選択肢に「帝王切開」があり、正解がこれであってほしいという思いから、逃げの一貫として画像を「遅発一過性徐脈」と命名したい欲求に駆られた自分はいなかったか? 重要なのは要求された通りに答えを出すこと。「これが答えであってほしい」という一心から、それっぽい根拠を探し出すのはベクトルが逆なのだ。画像読解に自信がなければ保留扱いにして他部位から材料を探してくればよいわけで、「遅発一過性徐脈」のように命名する必然性はない。そもそも「緊急で行うべき対応」ならまだしも、「まず行うべき対応」で帝王切開を選ぶ時点で違和感を感じてほしかった。
e ③で子宮収縮薬が投与されているため、もし子宮収縮を抑制したいのであれば、子宮収縮抑制薬投与ではなく、オキシトシンを減量〜中止することが先決。

正答率:34%

テーマ:変動一過性徐脈が出現した妊婦にまず行うべき対応

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし