112D19

72歳の女性。動悸を主訴に来院した。5年前に大動脈弁狭窄症に対して機械弁による大動脈弁置換術を受けており、定期的に受診し、ワルファリンを内服している。これまでの受診時の心電図検査では洞調律であったが、来院時の心電図は心拍数104/分の心房細動であった。意識は清明。脈拍96/分、不整。血圧120/76mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。頸部血管雑音を認めない。呼吸音に異常を認めない。神経学的所見に異常を認めない。血液所見:赤血球468万、Hb 13.7g/dL、白血球7,300、血小板18万、PT-INR 2.3(基準0.9〜1.1)。

この患者への対応として適切なのはどれか。

止血薬の点滴静注を行う。
へパリンの皮下注を追加する。
現在の抗凝固療法を継続する。
ビタミンKの投与を直ちに行う。
ワルファリン以外の経口抗凝固薬を追加する。

解答: c

112D19の解説

動悸を主訴に来院した72歳女性。機械弁置換後でありワルファリンを内服している。来院時の心電図が心拍数104/分の心房細動であることから、これが動悸の原因であろう。
a 出血傾向や貧血の進行はなく、止血薬の必要はない。
b 機械弁置換後でワルファリンを内服している場合、PT-INRの至適範囲は2〜3である(本患者では2.3と範囲内にある)。ヘパリンを追加する意味がない。
c 正しい。PT-INRは至適範囲であり、現治療を継続する。
d ビタミンKはワルファリンの拮抗薬である。ワルファリンの効果が切れると脳梗塞や塞栓症のリスクが上昇するため好ましくない。
e 機械弁に対する経口抗凝固薬はワルファリンのみである。ワルファリンのコントロールがつかない場合はヘパリンも検討するが、こちらは静脈内投与である。ちなみに、機械弁ではなく生体弁であれば心房細動に対する抗凝固薬としてワルファリン以外にも直接経口抗凝固薬〈DOAC〉も適応となる。しかし、そもそも本症例は本文から読み取れる中ではCHADS2スコア0点であり、心房細動に対する抗凝固薬の適応はない。

正答率:77%

テーマ:心房細動〈AF〉へのワルファリン投与量評価

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